日本が世界に先駆けていることのひとつ。それが超高齢化社会だ。

 既に全人口のおよそ25%が65歳以上の高齢者で占められ、その割合は2055年には40%を超えると予測されている。

世界に先駆け超高齢化社会を迎える日本の「資産」とは

 これはいまさら言うに及ばない自明のことであり、国内外の多くの人が長いこと意識し続けていることである。とはいえ、それに伴う諸課題は、それがいかに自明であろうともどれだけ意識し続けようとも、一朝一夕には解決しきれるものではない。

 確かに介護保険制度や介護施設、住宅や公共施設のバリアフリー化等の高齢化社会のインフラ整備は着々と進んでいるようには見える。

 しかしそれでも、労働力人口の減少、人口構造の変化に伴う生活や自治のあり方の模索、社会保障制度の設計等、高齢化社会の問題や課題は多岐にわたり尽きることがない。

 そして何しろ厄介なのが、これが世界の中でも日本が真っ先に直面する課題であるということだ。

 その解決策を示唆してくれる先例がなく、むしろ日本がそのロールモデルになっていかなければならない。超高齢化社会を日本がどのようにグランドデザインしていくか、世界中が注目している。

 日本が迎えつつあるこの超高齢化社会は陰の側面で捉えられることが多い。しかし一方で、陽の側面も持っていると考えている。

 それは超高齢化社会の日本には、膨大な知識と経験のストックがあることだ。

 日本の超高齢化社会の裏を返せば、長い人生の時間の中で培った貴重な知識と経験を持つ高齢者の方々が多数存在し、その総量がとてつもなく大きい社会なのだということになる。

 いまも、これからも、日本に限らず世界全体はたくさんの社会的課題に直面し続ける。その課題をクリアするのは結局のところ人知であり、その人知は先人から受け継がれながら質量のレベルアップがなされ、そしていまの社会がある。

 だからこそ、知識と経験の世代間継承は、人間にとって極めて重要なテーマなのだ。

 では、超高齢化社会の陽とも言える部分、すなわち高齢者の方々の知識と経験のストックが十分にシェアしきれているかと言えばそうではない。それらのストックが生かしきれないまま消滅しかねない、そんな危機感さえ覚えている。

 厚生労働省「平成23年度国民生活基礎調査」によると日本の世帯構造(平成22年6月3日現在)は次の通りとなっている。

1位 夫婦と未婚の子のみの世帯:1492.2万世帯(全世帯の30.7%)
2位 単独世帯:1238.6万世帯(同25.5%)
3位 夫婦のみの世帯:1099.4万世帯(同22.6%)