今週4回にわたってお届けしてきたエコノミスト・カンファレンス「ベルウェザー・シリーズ2012―アジア・グローバル金融の現状と未来」のリポート。最終回となる今日のテーマは『討論:‘X-day’を迎えないための財政プラン』。

 パネリストは、元財務副大臣で民主党政策調査会長代理・政策審議会長の櫻井充氏、自由民主党シャドウ・キャビネット官房副長官の林芳正氏、そして東京大学大学院経済学研究科・経済学部の井堀利宏教授。

今のままでは5年後以内に‘X-day’到来の可能性も

井堀 まず、X-Day(日本がデフォルトに陥る日)について私なりに定義しますと、国債の金利が単に上がるということは日本の場合なかなか想定できない。

 それでもじわじわと名目金利が上がっていき、政府の財政の予算編成が相当厳しくなり、銀行が国債の評価損を心配して売り始めると、金利が急騰するというシナリオはあり得ると思います。私は5年ぐらいでX-Dayは来ると見ています。

 一方で、消費税を5%から10%に上げるという今の最大の財政の争点は、X-Dayを回避するための必要条件の1つでしかありません。これだけではX-Dayを回避できませんので、さらに消費税を上げるなどせざるを得ないと思います。

櫻井 私もこのままいくと、ある程度の時期にやはり金利が上がってくると思います。あくまでも今のままいけばということですので、そうならないような状況をどうつくっていくのかが課題だと認識しています。

 私は平成10(1998)年に初当選したのですが、この時が一番、財政的な議論が大きかったと思っています。ところが、財務省が危ない危ないと言っていたのに、結局ずっと破綻せずにきてしまった。

 ですから国民の意識としても、みんな慣れっこになっていて、いまの方がもっと危機的な状況になっているのだけれども、その危機意識が何となく忘れ去られているような感じがしています。

 かつてスウェーデンでX-Dayに近いことが起こった時、スカンディア生命という同国最大の民間生命保険会社が国債購入の停止を表明し、長期金利が急上昇したことがありました。

自由民主党シャドウ・キャビネット官房副長官 林芳正氏

 我が国の場合は特殊な状況にあり、いま一番国債を持っているのはゆうちょ(郵貯)とかんぽ(簡保)です。ですから奇妙な安心感がある。郵貯や簡保は政府が株主ですから、真っ先に売り始めるということは多分ないだろうと。

 一番大きい所が売り出さないんだったら、まだ大丈夫だという意味では、特殊な理由で安心感が市場にあるということにも留意しておく必要があります。つまり、なんらかの政策の変更があった場合は、ショックが生じる可能性もあるということです。

 また、OECD(経済協力開発機構)諸国との比較で、消費税について言えば、今は5%ですからまだ上げる余地があると見られていることもあり、そういうこともあいまってまだX-Dayは来ないだろうと思われているのだと思います。

 しかし、国内で消化されていたり、まだ貯蓄があるという状況は、もうそんなに何年も続く現象ではないということは、肝に銘じておく必要があると思います。