第3回目となるエコノミスト・カンファレンス「ベルウェザー・シリーズ 2012―アジア・グローバル金融の現状と未来」リポートは、『基調対談:日本再活性化への道筋』のダイジェストをお届けする。
登壇者は、国家戦略担当 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)の古川元久氏と、経済同友会副代表幹事で野村アセットマネジメント取締役会議長の稲野和利氏。
アジアで高まる日本の金融機関のビジネスチャンス
古川 日本の金融機関、特にメガバンクはバブル崩壊後、アジア市場などから引いていきました。やや羹に懲りて膾を吹くという部分があるのではないかと思います。
その間、アジア諸国にはヨーロッパの金融機関がかなり入り込んできています。しかし、それらの金融機関も今回のヨーロッパの債務危機で、少し引き始めているという状況にある。
そういった意味では、もう一度、日本の金融機関がアジアが成長するためのマネーを供給する役割をもっと果たしていいのではないかと思っていますし、そうすべきだと思います。
過去の教訓をしっかりと生かしながら、アジアの国に対していまこそ、円高メリットを生かすという意味でも、どんどん出ていくべきではないでしょうか。
政府としてもJBIC(国際協力銀行)などを通じて、これは金融機関だけではなく日本の企業が海外に出ていくのをサポートする体制を取っています。また、アジアの旺盛なインフラ事業を取り込んでいくために、2年前からパッケージ型のインフラ輸出を促進するための閣僚会合を何度も開いています。
これまでのようなモノを売るだけではなく、オペレーションも含めたパッケージで、例えば鉄道や発電所など日本の強い分野をどんどんとアジアのインフラマーケットに売り込みをかけていきたい。
その際のファイナンスの部分を、JBICなどもサポートしていきますが、日本のメガバンクのみなさんにも積極的にコミットしていただきたいと思っています。
稲野 いま日本の貿易は、対アジアが5割以上になっています。そして、例えば輸出の場合、約48%は円建てになっています。輸出が円建てになっているということは、輸入する国においては円の資金需要があるということであり、このへんでも日本の金融機関の活動余地がかつてに比べて大きくなっています。
そのような状況で、「円」のアジアにおける国際化を政策としてもっと推し進めることによって、金融機関におけるさまざまなビジネスチャンスも拡大するのではないかと思います。
また、「成長ファイナンス推進会議」において、アジア債券市場というテーマも取り上げられています。このような領域も日本の金融ビジネス、アジアの金融ビジネスにとっては非常に重要だと思います。