メディアの近未来図を映す秀逸なショートムービー「EPIC 2014」を前回紹介しました。その結論が本稿の入り口です。

 「EPIC 2014」は、グーグルとアマゾンの合併によるグーグルゾン、そして、両社の技術の融合によって「最良にして最悪のメディア」EPICの誕生を描きます。

 ロボットがコンテンツを収集しユーザーに向けパーソナライズして届ける究極の無人メディアEPIC。これにいらだつ従来メディアの代表格ニューヨーク・タイムズが著作権をタテに裁判を挑みます。

 その判決が敗北に終わったとき、同紙は「Googlezonの支配に対する精一杯の抵抗としてオフラインとなった」という結末が描かれました。

 EPIC2014が描く近未来の結末に対し、現実にはニューヨーク・タイムズをはじめとする既存大手メディアが「オフライン」へと引きこもる兆候はありません。

 しかし、それとは異なる現実が見えてきました。それは「オフライン」へと引きこもる代わりにウェブの世界に“ウォール(壁)”を積み上げることです。

 連載第2回は、国内外の大手メディアが一斉に取り組みを始めた“ウォール”の動向に目を向けます。

今回の注目ポイント:大手メディアをめぐる大きなトレンド“ペイウォール”

米紙ニューヨーク・タイムズ、来年から電子版記事を有料化へ

ペイウォールを導入したニューヨーク・タイムズ〔AFPBB News

 「ペイウォール」とは、メディアの全体、もしくは部分に登録者専用などの障壁を設け、その先は非登録者に閲覧を認めない仕組みの総称です。

 「ペイ」は有料購読を指しますが、ペイウォールのバリエーションには、無料ながら詳細な登録者情報を求めるようなタイプも含まれます。

 このペイウォールに取り組む代表格は、ウォールストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズ、ニューヨーク・タイムズ、日経新聞朝日新聞、そして読売新聞など大手ですが、無数の地方新聞社が存在する米国だけでも、取り組みを開始したメディアは100社近くに及ぶとも言われ、大きな潮流へと拡大しています。

 すでに理解されているように、ペイウォールには、新興テクノロジー企業による“勝手な”コンテンツの2次利用への抵抗という側面、益をもたらさない膨大なタダ読み読者層への抵抗という側面があります。

 後者のタダ読み読者層については、「ウェブでは有料化は成功しない」という論調が根強かったため、これまでは有料化を回避し広告料収入などの収益化を目指すという常識から是認されてきました。

 しかし、昨今では広告収入の不調も常態化し、だれがタダ読みを排し有料化という冒険を成功させられるのかに注目が集まっていたのです。