「サイバー攻撃に関する限り、米中戦争はすでに始まった」
私がちょうど1年ほど前にワシントンの大手シンクタンク「ヘリテージ財団」の首席中国研究員ディーン・チェン氏から直接に聞いた言葉だ。チェン氏は中国の人民解放軍のサイバー攻撃や宇宙兵器など高度技術がからむ領域を長年研究してきた専門家である。
それから1年が過ぎた今、改めてこの言葉の現実性を痛感させられた。米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」が、この中国のサイバー攻撃を大きく取り上げ、米国の対応に警鐘を鳴らしているからだ。
この調査委員会は、「米中経済関係が米国の国家安全保障にどう影響するか」を調査し、議会や政府に政策を勧告する組織である。
共和、民主両党の有力議員がそれぞれ推薦した合計12人の委員で構成され、毎月2回平均の頻度で、公聴会を開いている。公聴会は米中関係での米国の安全保障に関わる時の課題をテーマとし、その分野の専門家たちを招いて証言を聞く。同時に特定のテーマについて同委員会独自の調査報告を作成し、公表する。
米中経済安保調査委員会は、中国のサイバー攻撃をすでにいくつかの角度から取り上げてきたが、この3月にも新しい報告書と公聴会の両方でその恐るべき実態を改めて明らかにしたのだった。
米国へのサイバー攻撃、犯人は中国人民解放軍
同委員会は、3月上旬、「中国のコンピューターネットワーク作戦とサイバースパイ活動」と題する報告書を公表した。
この報告書は、中国人民解放軍がサイバー攻撃を対米軍事戦略の中枢に位置づけ、実際にその攻撃能力を画期的に増強している、という骨子だった。また同報告書は、中国軍が米国のコンピューターネットワークへの攻撃を実際の戦争の不可欠な一環としているのに対し、米側はまだその対応が十分ではないと警告していた。