ユーロは5月17日の外為市場でも下落余地を探る場面があり、東京市場で一時1ユーロ=1.2235ドルを記録。対円で113円割れとなった。その後の欧米市場では、国債買い入れの14日時点での総額が165億ユーロであることをトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁が明らかにした上で、それに伴う市場への資金供給を「不胎化」するための資金吸収策の具体的内容(1週間物の預金入札で、最高応札金利は1.0%)を公表したことで、ECBが量的緩和にこのまま追い込まれるという見方が市場で後退し、いったんユーロに買い戻しが入った。だが、ユーロの過大評価是正が一巡したわけではない(「トリシェECB総裁の『言い訳』」参照)。

 実際、この日はユーロ安を事実上容認する発言が、ユーロ圏の政策当局者から相次いで発せられた。

◇ノボトニー・オーストリア中銀総裁
「ユーロに関し問題はない」「間違いなく正常なレンジにある。過剰反応を示す特定の理由はない」「(とりわけドイツで)インフレ圧力をめぐりかなりの過剰反応があることに驚いている」「これはまったく問題ではない。遅すぎる成長が、われわれが抱えている問題だ」

◇ユンケル・ユーログループ議長
「ユーロの現行水準は懸念していないが、急速な悪化を懸念している」

◇レインデルス・ベルギー財務相
「懸念すべきなのはユーロの水準ではない」「弱いユーロはプラスとマイナスの影響がある」「ユーロが強い時には、われわれは輸出できないと懸念する。弱すぎる時には、エネルギーコストについて心配する」

◇アルタファイ欧州委員会報道官
「われわれはユーロ相場の日々の変動に関与する立場にない」「欧州の輸出にとっては支援材料だ」「二者択一の状況ではない」「(ユーロ安には)良い面と悪い面がある」

 ユーロの過大評価が是正されるにしたがって、また、同時並行的に米国株が下落に転じることで投資家のリスク回避志向がグローバルに強まる中で、投資マネーの「ドル回帰」が鮮明になっている。そのことは米連邦準備理事会(FRB)が発表しているドル実効レートの動きからうかがえる。

 5月14日時点のドル実効レートは、対主要通貨(1973年3月=100)が79.4172で、2009年5月18日以来、約1年ぶりのドル高水準になった。ブロード(1997年1月=100)は105.1741で、こちらは2009年7月14日以来のドル高水準である。