この連載でも何度かご紹介していますが、海外留学する日本人の数(送り出し)は、日本に留学する外国人の数(受け入れ)の約半分です。お隣の中国、韓国に比べても送り出し留学者数は大きく引き離されています。
日本はただでさえ少子化なのに若者が海外へ行ったきり戻ってこなかったら大変だとか、明治維新の時代とは異なり、世界第3位の経済大国なのだからもはや海外で学ぶ必要はないとか、様々な意見があるでしょうが、私はそれでも海外留学は推進すべきだと思っています。
理由はこれまでの連載で述べてきましたので詳細は割愛しますが、「国境なきグローバル経済における日本のプレゼンス向上」や、「世界全体の繁栄に貢献できる人材の育成」「武力ではなく人的ネットワークによる国防」など、中長期的な視野で見た時に必ず成果が見えてくるはずです。
そこで今回は、前回の留学生受け入れ施策の提言に続き、海外留学(送り出し)推進の施策について考えていきたいと思います。
かわいい子には旅をさせよ
まず挙げなければならないのは、海外留学の訴求および支援不足です。
これまでは海外留学というと、MBAや明確な目的を伴うプログラムを除いては、日本の教育システムに馴染めない個性的な若者が、遊学的に語学を学びに行くというイメージを抱いている方も少なくありませんでした。
確かにいまだにそのような留学生がいることは否定しませんが(日本人だけでつるんで、実りのない海外生活を送っている学生なども確かにいます)、しっかりと目的意識を持って海を渡る若者の中には将来有望な原石をたくさん見出すことができます。
語学力もさることながら、圧倒的マイノリティな存在な中で、ある程度の期間、何とか全うしたという体験が大きな自信につながることで強靭なメンタルを養います。
私自身も、学生時代や社会人になりたての頃に、東南アジアやインド、アフリカ、アラスカなどをバックパッカーとして長期間放浪した経験が原体験となり(生死をさまようこともありましたが)、今の自分のベースとなっていることは間違いありません。
まさにこれからの日本には、どんな環境でも柔軟に構え問題解決に果敢にチャレンジする人材が必要なはずなのですが、そのための留学の意義がいまひとつ社会に認知されていない気がします。
ようやく最近になって一部の企業で留学経験者を積極採用することをアピールするところも出てき始めましたが、大きな社会的潮流にはなっていません。