北朝鮮は4月13日、長距離弾道ミサイルに転用できる人工衛星の打ち上げを断行したものの失敗、わずか1分後には洋上に落下した。面子を失った北朝鮮の今後の対応に世界各国は懸念を表明している。この件と最近の中国の動向につき、少し振り返ってみよう。

日本政府、北「ミサイル発射」の情報確認はメディア頼み

韓国・ソウルで、北朝鮮の長距離ミサイル発射のニュースを伝えるテレビ画面に見入る市民ら(2012年4月13日)〔AFPBB News

 3月16日(2012年)、北朝鮮は長距離弾道ミサイルに転用できる人工衛星打ち上げの発射予告を行った。

 それに前後して、朝鮮中央放送(3月3日)は戦略ロケット司令部の存在を明かし、正恩氏が視察したことを伝え、産経新聞(3月17日付)は正恩氏が側近に「核の積極活用」を指示したと報道した。

 他方、人民日報(3月21日)は、日本が尖閣諸島周辺の離島に命名したことに対し、「中国の核心的利益を損なう振る舞い」と非難し、同諸島沖の巡視活動は「日本の実効支配を打破する目的」であると伝えた。

 牙をむき出しにしつつある中朝のこうした挑発的行為は、核ミサイルを背景にした恫喝で、日本は真剣に対処策を考究する必要がある。

非核平和宣言都市は本当か

 米朝2国間協議で北朝鮮のウラン濃縮と長距離ミサイル発射実験のモラトリアムに関する合意(2月29日)が成立して間もなくの、モラトリアム違反とも取れる発射予告は日米に大きな動揺を与えている。今後は「米国も火の海を免れない」という意思表示ではないだろうか。

 累次の6カ国協議もそうであったが、北朝鮮との会談や合意は、同国の核・ミサイル開発に合法的な猶予期間を与えるようなものであった。今回の合意も北朝鮮の核開発に然程の影響を及ぼさないと見られている寧辺の核施設の査察であり、またミサイルの発射停止は米朝の実りある会談が行われている期間と限定していた。

 他方、中国は従来宇宙の軍事利用を制限するよう熱心に提案し、また核軍縮のため努力し全ての国との友好関係を望むと言明していた。しかし現実には、宇宙の軍事利用に邁進し衛星破壊実験を行い、核弾頭ミサイルでは多弾頭化や命中率の向上に努め、米中対決のような場合は核兵器の使用もいとわないと人民解放軍の要人が発言するようになった。

 中国がこれほど核にこだわるのは朝鮮戦争以来、少なくも3度は米国から核恫喝を受け沈黙せざるを得なかったからである。

 中国は有事の場合、相手の指揮・通信・監視等に関わる衛星を機能不全にすることを企図していることは明確で、米国東部に届くICBMや隠密に接近できる原子力潜水艦発射のSLBMを多数装備している。

 人口が半減することさえ許容する中国は何も失うものはないとしており、いざという時は核で米国を牽制し、日本を孤立させる心づもりであろう。日本を射程内に収める中距離弾道ミサイルは100基以上、台湾・尖閣諸島を射程に収める短距離弾道ミサイルを含めると1000基以上配備していると見られている。