MSN産経ニュース(2012年1月22日)によると、防衛大学校卒業生で任官を辞退する卒業生から授業料・入学金に相当する約250万円を償還金として徴収することになったとのことである。また任官後6年以内に退職する卒業生からも在職期間に応じて徴収するとのこと。
理由はより多くの幹部自衛官を確保することと、一般大学生との不公平感をなくすというものである。要するに1人でも辞退者を減らしたい、ということと同じ学士をもらえるのに一方は金を払い、一方は税金で衣食住手当付きでうらやましいという感情に配慮したということらしい。
仮に20人任官辞退者が出れば合計5000万円が国庫に入って、それでいわゆる「任官辞退問題」は解決ということで話題にならないようになるのだろうか。また国立大はもちろん私立大学も相当の税金をつぎ込んでいるが、各大学の建学精神・目的にそぐわない学生や卒業生に償還金は求めないのか。
結論から言えば、6年の義務年限に特段の異論はない。しかし約250万円の償還金の効果は逆になるだろう。
より多くの自衛官を確保したいのなら、その処遇を向上させるのが第一である。処遇といっても給与の話ではない。自衛隊・自衛官に対する正当な社会的評価である。
さすがに40~50年前のように、小学校の教室で自衛官の子弟に対し、クラス全員の前で「君たちのお父さんは人殺しの練習をしている。自衛隊は憲法違反だから、自衛隊を解散して国土建設隊にした方がいい」などと、担任教師が父兄の職業による差別発言をするようなことはなくなったとは思う。
しかし近年でも、海外派遣される自衛隊部隊の見送りや激励を、あえて避けてきた総理や、自衛隊の高級幹部会同を最高指揮官たる総理が無視をして出席をしないということもあった。
そのような政治のリーダーシップから生まれる、自衛隊に対する不当に貶められた風潮の中で育った子供たちが、18歳になって国家防衛の志に燃えて防衛大学校に大挙押しかけるなどということはあり得ず、黙っていても卒業生が自衛隊にぜひ入りたいなどということにはならない。そこがまず政治のリーダーシップで改善すべきところだろう。
最近でこそ、自衛隊の国際協力活動や、災害派遣の活動を見て、自分も人の役に立ちたいと、防衛大学校を志す若者も増えたが、受験料がタダだからとか授業料がいらないのでといった理由で入学してくる場合が大半と思われる。
そういう若者たちであっても防衛大学校の教育で、ほとんどのものが自衛隊幹部に任官するようになるのである。確かに任官辞退者はいる。しかしその数は400人前後の卒業生のうちの10~30人程度で、ここ数年の平均は5%程度である。
国の防衛の重要性など中学・高校で教わったこともなく、したがって自衛隊の存在意義などほとんど考えたことのない現代の若者が4年間の防衛大の教育で95%が任官するのである。