なんと盛り上がらない大統領選なのだろうか。今月6日、全米10州で行われたスーパーチューズデー(予備選)を取材した後の感想である。
CNNやFOXニュースなどのニュース専門局や米新聞は報道過多と言えるほどの騒ぎようだが、実際に話を聞いた多くの有権者は意外にも冷めていた。そこには大きな温度差がある。
しかもオハイオ州という最激戦と言われた州都コロンバスをくまなく取材した後の印象がそうである。町の中には共和党候補としてトップを走るミット・ロムニ―前マサチューセッツ州知事の名前が書かれたサインさえ見当たらない。
候補者の名前すら見当たらないオハイオ州都コロンバス
米国選挙では日本のような顔写真入りのポスターは張らない。その代わり、名前が刻まれたサインを民家の前庭やビルの窓ガラスなどに掲げるが、市内や郊外を車で走っても1枚も目に入らない。
予備選が最初に行われたニューハンプシャー州では、少なくとも町中から選挙への熱が伝わるが、オハイオ州では何ごともないかのようだ。
ロムニー氏の選挙事務所もコロンバスの中心部にはなく、さびれた貸事務所が並ぶ建物の1階にひっそり構えられていた。これはわざと外から目立たないようにする計らいなのだが、メディアの加熱報道がまったく嘘のようでさえある。
「予備選の投票には行かないです。11月でしたっけ本選挙は? その時は行くかな・・・」
オハイオ州で建設業に携わるクリス・オドーネルさん(38)は予備選には興味がないとはっきり言う。なぜかと問うと、「投票なんか1年に1回でいい」と返答した。
筆者は米大統領選をライフワークとして20年以上、多くの州で取材しているが、奇しくもオドーネルさんのコメントは予備選時のごく平均的な有権者の反応である。
明言すると、政治に興味のある米市民は少ない。特に予備選の段階で、有権者が熱を帯びることは稀だ。本当に真剣になるのはワールドシリーズ(通常10月末)が終わってからとも言われる。