今週は、反体制派への弾圧が激しさを増すシリアに関する記事をご紹介したい。
先日、サッカーのロンドン五輪最終予選の日本対シリア戦が、シリアの政情不安のため第3国のヨルダンで開催されたことは記憶に新しいと思う。
シリアでは、政府軍による反体制派への武力弾圧で、約1年前に反体制運動が始まって以来の死者数は5000人以上とも7000人を超えるとも言われている。
フェイスブックが知らせるシリア国内の声
2月13日公開の記事、『フェイスブックに怒りの声「ジハードに立ち上がるべきだ」』は、北朝鮮なみの独裁国家で、国際メディアの自由な取材が一切認められていないシリア国内の状況を、筆者の黒井文太郎氏がフェイスブックを通じて探ったものだ。
シリアのバシャル・アル・アサド大統領は先代からの世襲で、チュニジアやエジプトの「アラブの春」の影響で起きた国内の民主化デモを治安部隊によって弾圧している。
2月3日から4日にかけて反体制派の拠点があるホムスで行われた市街地への砲撃による大量殺害は、国際メディアでも大々的に伝えられた。
この状況に対し、2月4日に国連安保理で、アサド大統領に副大統領への権限移譲を求める内容の非難決議案が提出された。安保理のアサド大統領非難決議案提出は昨年10月に続いて2度目になるが、2回ともロシアと中国が拒否権を行使して廃案に追い込まれている。
17日には国連総会で、アサド政権非難決議案が採択された。シリアに対する国際社会の強い警告を表明したかたちだが、総会決議には安保理のような法的拘束力はない。
ここでもロシア、中国は反対に回り、「主権国家への必要以上の介入だ」という理由を述べたと伝えられている。
実はシリアとロシアは東西冷戦時代から深い関係にあり、ロシアから多額の武器輸出が行われているほか、旧ソ連圏外以外で唯一、ロシア海軍の補給基地があるなど軍事的な結びつきも強い。そのため、ロシアにとってはアサド政権が倒れるのは国益に反するのだ。