5月1日深夜、中国当局の幹部から「丹東にある中連ホテルの一般利用が禁止になるよ」との電話をもらった。
中国の当局者がこっそり知らせてくれた金正日氏の訪中
「中連ホテル(「中連大酒店」)」とは、中国と北朝鮮間の国境となっている鴨緑江に面したホテルで、日本や韓国のジャーナリストたちもここ数カ月同ホテルに「潜伏」し、窓越しにカメラを24時間体制で設置していた。
筆者も国境都市丹東を訪れた際には、その光景を興味深く拝見した。電話を切り、「ついにこの時がやってきたか」と感嘆した。
彼らが狙っていたのは言うまでもない、金正日(キム・ジョンイル)氏の訪中である。2006年1月以来4年ぶり、1997年に総書記に就任して以来5回目になる。
5月3日朝5時20分(日本時間6時20分)頃、金総書記の乗った特別列車が北朝鮮側から中朝友誼橋を経て遼寧省丹東駅に到着、リムジン型の乗用車に乗り換えて、9時30分頃、同省の港湾都市、大連に入った。厳重な警備が敷かれた。
金総書記らが宿泊したホテルは迎賓館ではなく、5つ星ホテルのフラマホテルだった。現地の知人によると、「フラマホテルには当日も入ることができた。金正日を近くで見ることも全然可能だった」。
2006年とは比べものにならないゆるい警備と情報統制
人気者である金総書記の行き先には日韓メディアを中心に、多くの記者たちが「同行」した。テープやフィルムが公安当局から強引に没収されるなどの事態も発生した。
しかし、2006年1月にも取材班に加わった某カメラマンは、「前回は金総書記の宿泊場所付近のホテルはすべて封鎖されていた。近づくことも難しかった。今回は向かいのホテルにも泊まれるし、警備も気持ち悪いくらいゆるい」と筆者に違和感を伝えた。
健康悪化説が騒がれる中、金総書記は訪中を機に、あえて外国メディアに取材させ、健康状態をアピールしようとしたのかもしれない。
中朝間には「血の同盟」としての契約がある。金総書記の訪問中は一切の報道が禁止され、本人帰国後、両国がほぼ同じタイミングで、党・政府ホームページ、あるいは国営通信に公表させるのが常である。