見知らぬ地での楽しみの1つに酒がある。普段あまり飲まない私でも、旅先では酒を飲む。日本では各地に数々の銘酒がありその趣を競っているが、世界中どこにでも何かしらその地のにおいがする酒というものがあるからだ。
名もない地元の酒が旅人を癒やす
至る所から輸入され、多種多様な酒を容易に手にできる今、現地で飲む有難味も薄れているように思えるが、それはあくまでもあるレベル以上の場合。名もなき地域の品質も分からぬ酒を輸入する業者などいるわけもないので、その地で飲むしかないものはまだまだ数多い。
以前はそんな酒をせっせと日本まで持ち帰って、知人とワイワイ言いながら飲んだものだが、液体爆弾テロ未遂事件があってから、飛行機内への液体持ち込み制限が厳しくなり、面倒なのでやめてしまった。
きっちりパッキングして預け入れ荷物に入れればいいだろう、とも言われるが、飛行場でスーツケースを数メートル下に平気で放り投げている様子を見ていると、割れ物を入れる気など失せてしまう。
しかし、そんな旅先の楽しみが存在しえない所もある。クルアーン(コーラン)の教えに背くとしてアルコールを禁じているイスラム教国である。その代表とも言えるサウジアラビアでは、背けば厳罰を受けることになるので、国内で飲めることはまずないと思った方がいい。
私は陸路でバーレーンから入国したのだが、国境では厳重なる荷物のオープンチェックを受けることになった。酒が持ち込めないのは当然としても、栄養ドリンクや調味料まで、微量ながらアルコール分が含まれているということで取り上げられてしまったのには少々面喰らった。
酒が自由だったトルコで規制強化の動き
バーレーンもイスラム教国なのだが、酒が自由に買えるので、国境検問は一段と厳しいようである。
そんな地域では、酒の代わりとして最近日本でも人気のノンアルコールビールのようなものがあればそれなりに楽しめるのだが、大抵はコーラやサイダーなど面白味のないものばかりで、旅の楽しみをひとつ取り上げられてしまったようでがっかりさせられる。
飛行機でも、サウジアラビア航空やイラン航空では酒は積んでいないが、アラブ首長国連邦のドバイの航空会社であるエミレーツ航空ではバラエティーに富んだ酒を楽しむことができる。
イスラムの大国トルコに至っては、水を入れると濁る「ラク」という名物酒もあるほどに自由に酒が飲めて、まさに世俗イスラムの代表といった感じなのだが、最近少々様相が変わりつつあるのが気がかりだ。