川嶋 産業的に考えると私もそうだと思います。やるなら徹底的にやる、やめるならキッパリとやめる。中途半端に日本的な妥協の産物になると大変なことになる。
ちなみに先日、下北半島の六ヶ所村に行って驚いたんですが、新興住宅地ができていて、すごく人が増えているんです。「あれ数カ月前に来た時にはなかったカフェができている」と、よく六ヶ所村に足を運ぶ人は驚いていました。
ここはエネルギー特区なので風力などの新しい実験が行われているということもあるのですが、原発はなくなっても放射性廃棄物はなくならないので、その処分場・貯蔵施設の場所として有力だと見込まれて人が住み始めているようです。
いずれにしろ、こうやって対立する議論を1つのテーブルに載せてみると、一番取ってはならない策、中途半端な妥協点の危険性が見えてきますね。
大江 税と社会保障の一体改革についても、いま合意しているのは給付はやっぱり減らさないということ。さらに、増税をあてにして社会保障はもっと手厚くしていこうとしている。これは最悪ですよね。
年金と医療費を減らすことが必要なのに、そこには手をつけない。こういう最悪のチョイスをしてしまうというのは、民主主義が限界にきているということじゃないでしょうか。
川嶋 明らかに民主主義の限界でしょうね。成熟した国の、それも複雑に利権が絡んだ中で大胆な改革をするというのは極めて難しい。大阪で橋下徹市長が生まれたのは、1つの希望ですが、日本の国政を見る限り、いまの民主主義では全く対応できない気がします。
大江 ギリシャやEU(欧州連合)の問題を見ていながら、こういう議論をしているというのは・・・。
川嶋 このまま進めば日本はギリシャと同じになります。ということは、超円安が来る。国債の金利が10%を超えるようになり、円レートはプラザ合意前の1ドル360円、あるいは1000円とか。そうすると国債がデフォルトして日本の金融機関は全部倒産ですよ。経済が破綻する。
そうならないためにも、消費税を上げて踏ん張ろうというのが増税派の人たちの考えでしょうが、この経済環境で増税すれば明らかに経済はマヒします。結局は日本の経済破綻を早めてしまう。それよりいまは経済を改善させるために減税しろ、というのがJBpressの主張です。
大江 うちは増税ですから、また対立しますね(笑)。
日本の既得権益は「太陽政策」で崩していくしかない
川嶋 ウェブの場合、激しい内容やコンテンツタイトルの方がページビューは取れると思うんですが、ただメディアとして本当に日本を変えようと思うと、激しくやればやるほど反発も激しくなって、結果的に敵に塩を送るみたいな格好になってしまう。
橋下(徹・大阪市長)氏がいい例です。週刊誌がすごく批判したけれど、それが逆に橋下氏の追い風になってしまった。