2009年の自殺者数は、警察庁のまとめによると3万2753人と、12年連続で3万人を超えた。自殺率は10万人あたり24.4人と、世界で第6位だ。

図1 自殺者数の年齢別推移(「社会実情データ図録」より)
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 日本より自殺率が高いのは、ベラルーシ、リトアニア、ロシアなど旧社会主義国ばかりである。これらの国と日本が共通するのは、旧秩序が崩壊したのに新秩序ができていない宙ぶらりんの状態が長期にわたって続いていることだ。

 特に日本では、1998年に2万3000人から3万1000人へ一挙に35%も増えた。この年は北海道拓殖銀行、山一証券の破綻に続いて、日本長期信用銀行や日本債券信用銀行などの破綻があり、これに伴って企業倒産件数も負債総額も90年代で最悪になった。

 日本では自殺率は失業率と強い相関があり、98年の激増は金融危機で説明がつくが、景気が回復した2000年代になっても、自殺率は高いままだ。特に目立つのは、図1のように老人の自殺率が下がる一方、雇用が不安定化した30代以下の自殺率が上がっていることである。

図2 失業率の推移
(経済産業省の資料より。総務省「労働力調査(季節調整値)」、内閣府「経済財政白書」より作成したもの)
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 失業で自殺が増えるのは当たり前だと思いがちだが、実はこれは日本に特有の現象である。河西千秋『自殺予防学』によれば、スウェーデンでは1992年の金融危機で失業率は2%から10%に激増したが、自殺者は減り、その後も減り続けている。これは欧州では失業給付が手厚く、職を失ってから数年間、就業中とあまり変わらない所得が保障され、職業訓練によって転職を促進するなど、失業を前提にした制度設計ができているからだ。

 他方、日本では「終身雇用」によって会社が従業員の職を保障する建て前になっているため、失業給付は短く、職業訓練もほとんど行われていない。他方、企業が自宅待機の休職者に支払う手当を政府が補填する雇用調整助成金は、2008年度の10億円弱から2009年度には6000億円以上と激増した。このような潜在失業者は、経済産業省の推定によれば図2のように905万人、潜在失業率は13.7%に上る。

会社を離れると絶対的孤独になる日本人

 これまで日本の労働政策は、企業に福祉の負担を押しつけて、失業保険や生活保護などの社会的セーフティーネットが手薄だった。失業はあってはならないことで、転職は必要悪という位置づけだったので、失業した場合の救済手段がほとんどない。