核態勢見直し(NPR: Nuclear Posture Review)は、米国からいざ発表されてみるとオバマ氏個人の明確な刻印を帯びたものだったことが明らかだ。
ついに世に出たNPR
ニューヨーク・タイムズの報道によると、大統領直轄・ホワイトハウスの国家安全保障会議(National Security Council)が主宰した30回を含め、合計150次にも上る会議を経てNPRは世に出た。道理で発表時期が後ろへ、後ろへと順延されたわけだ。
結果として、オバマ氏自ら招集しワシントンで開く「核安保サミット」に、発表のタイミングを合わせた形となった。国連発足時以来の規模だという50カ国近い参加を得て開く一大会議は、規模だけからしてもまず間違いなく歴史に残るイベントとなる。
日本が持つべき懸念とは
オバマ氏のNPRは、新たな核開発を放棄すると謳う。それなら過去本欄(米核戦力賞味期限切れ?)で見たとおり、米国の核とは既に耐用年数を過ぎたものばかりであるからそのさらなる経年劣化は避けられず、「核の傘」は、もしかして「破れ傘」ではないかなど、猜疑を抱かねばならない余地が生じ得る。
核不拡散体制に一応加わりながら、なおかつ生物・化学兵器を用い大量殺戮をしでかしかねない国があったとして、もはや米国は核兵器をそれへの抑止力として用いないともいう。
――以上の2点は、公認・非公認の核保有国(であり生物・化学兵器保有国)に近所隣を囲まれた日本にとってどんな意味をもつものか。とくと考えなくてはならない論点だ。
益荒男ぶりから手弱女ぶりへ?
核兵器に新たな定義を与えようとするオバマ氏は、そのことによって米国像と、米国指導力の源泉とに書き換えを図っているかに見える。