中国では昔から中央政府も地方政府も予算と決算の大まかな数字しか公表しない。なぜなら政府の予算は「国家機密」として取り扱われているからである。

 「改革開放」政策以来の30年間、中国の経済成長率(実質GDP伸び率)は年平均10%に上り、公的予算の規模も大きく膨らんでいる。

 国民の税金を投入している政府予算を執行するに当たって、その透明性と可視化を確保するのは大前提のはずである。しかし現状では、予算がどのように執行されているかは、国民にはまったく分からない状況にある。

 予算執行の不透明さは、共産党幹部による公金横領や着服など腐敗の温床にもなっている。幹部の腐敗は年々深刻化し、国民の不満が高まっている。

 財政予算を形作るのは、政府が国民から預かった税金であり、それを何に支出するかを示すのは予算と決算である。どんぶり勘定にして分からなくすると、公的財政の効率が低下し、幹部の腐敗を生み出すことになる。政府の予算と決算を可視化することは、予算執行の効率化を担保し、腐敗を減らすことにもなるのだ。

公的予算は膨らむ一方、だが透明性は欠如

 市場経済では、資源の配置は基本的に市場の価格メカニズムによって行われる。需要と供給が均衡するところで価格は安定する。需要と供給の不均衡を価格変動が調整するのだが、価格メカニズムは時々オーバーシューティングしてしまう(均衡点や本来あるべき水準から外れてしまう)ことがある。ここで市場に介入して「市場の失敗」を補うのは政府の役割である。

 また、地域間の経済格差を是正するのも政府の役割である。豊かな地域からの税収の一部を貧しい地域に交付することによって地域格差を縮小する。

 近年、経済成長が遅れている西部地域の経済を振興するために、中国政府は「西部大開発」のビッグプロジェクトを立ち上げている。同様に、経済発展が遅れている東北地方の経済を再生するために、「東北振興」を目標に掲げ、大がかりな予算を投入しようとしている。