成田空港の発着上限の引き上げを受け、2010年3月28日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ政府系エミレーツ航空とアブダビ国営エティハド航空が直行便の運航を開始した。帽子にスカーフを組み合わせたエキゾチックな制服姿の客室乗務員(CA)の姿はひときわ目を引く。
資源関係のビジネス利用が多い地域だけに、一般の旅行者にはまだ馴染みの薄い航空会社だが、実は、CA志望者の間では人気急上昇中だ。
エミレーツは1985年創設以来、濃(こま)やかなサービスが好評で国際賞の受賞歴は400を超える。2003年開業のエティハドは2009年のワールドトラベルアワードの世界最優秀エアラインに選ばれた。ともに人材確保に力を入れており、「高い年収、高級マンションの提供、医療費会社負担など、日本の航空会社と比べると夢のような高待遇」(国内大手航空社員)という。
エミレーツでは既に約200人、エティハドでは約100人の日本人がCAとして勤務しており、成田就航でさらに増員される。日本航空(JAL)は2011年度に全職種の採用ゼロを決めたほか、今後、一段のリストラが避けられないだけに、中東2社の募集動向には、新卒志望者だけではなく、現役CAも注目。JALからは転職希望者が殺到するのではないかとさえ言われている。
栄枯盛衰。
明暗はくっきりと分かれているが、政府系エミレーツ、国営エティハドも、経営、財務面で公的関与を受けている点は日航と同じだ。もちろん、日航への公的支援は中東系と異なり、一時的な措置のはずだが、ここに来て「JALは永遠に公的支援から抜け出せないかもしれない」という懸念が浮上してきた。背景には法的整理以降、さらに冷え込み始めた金融機関との関係がある。
3メガ、保有債権手放して関係清算?
会社更生手続き中の日航に対する公的資金支援は計9000億円。策定中の更生計画が8月にも裁判所から認可されれば、企業再生支援機構が3000億円を出資。残り6000億円は機構と日本政策投資銀行によるDIPファイナンス(事業再生融資)枠が用意され、投入が始まっている。