劇場映画の興行収入で、「タイタニック」が持っていた歴代最高記録を塗り替えたSF大作「アバター」。米アカデミー賞では、作品賞や監督賞など最多9部門にノミネートされながら、受賞はわずか3部門にとどまり、「惨敗」(米メディア)とこき下ろされているのは周知の通りだ。
だが「アバター」が、エンターテインメント業界に一大転機をもたらした功績を忘れてはいけない。映画の祭典を主催する米映画芸術科学アカデミーも、それを無視するほど愚かではなく、同作品に視覚効果賞を与えたのは心憎い演出だ。
2009年公開の「アバター」は、映像を立体的に見せる3D技術を駆使した臨場感が売り物。3D映画が年間興行収入で首位になったのは昨年が初めてだ。映画館の入場料は、3D作品が通常作品に比べて割高なのにもかかわらず、大勢のファンを集めた。「3Dの大衆化がいよいよ実現する」(米映画業界関係者)との期待が高まっている。
立体映像の波、映画館からリビングへ
そして今、3Dの波は映画館から家庭のリビングに押し寄せ始めた。3月10日、トレンド創出の街、ニューヨークのグリニッチビレッジ。その北端にある米最大の家電販売チェーン「ベスト・バイ」で、パナソニックが50インチ画面のプラズマ3Dテレビを世界に先駆けて売り出した。
発売記念の記者会見には、新聞やテレビなど総勢100人余りの報道陣が集まった。3Dブルーレイディスクプレーヤーと専用メガネ1個をセットにした価格は約2900ドル(約26万2000円)。当面は、米映画会社20世紀フォックスの協力で、3D映画ソフト1本がおまけで付いてくる。
ただ、先陣を切ったパナソニックが有利とは言えない。米国の薄型テレビ市場で約3割という最大シェアを築いた韓国のサムスン電子が、同型3Dテレビで約1700ドル(約15万4000円)の廉価モデルをまもなく投入するからだ。同じ韓国勢ではLG電子、日本からはソニーも追随し、日韓メーカーの販売合戦は夏を待たずに白熱するはずだ。