日経平均、終値7703円04銭 3週間ぶり安値

危機は繰り返す。いくら緻密な計算をしても、予想通りに危機をコントロールできるわけではない〔AFPBB News〕

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 金融工学は「確率微分方程式」という数学の応用で、「世界のすべては正規分布に従っているはずだ」との前提でリスクを想定していた。実はその当時、既に金融工学が想定したよりも高い頻度で危機は起こっていることが分かっていたにもかかわらず、ドリームチームは危機を回避することができなかった。

 そして、サブプライムローン問題に端を発する世界金融危機においても、LTCMの教訓は生かされることはなかった。いくらそれらしい数式を並べてみても、「正規分布的に事象が起きる」という前提が間違っていれば何の役にも立たない。

 このような未知の危機に対する対応策が、事業継続マネジメント(Business Continuity Management=2009年11月12日付「地震、カミナリ、火事・・・テロリズム」参照)という考え方だ。

 当初の事業継続マネジメントの考え方は、どんな想定外の危機に見舞われても、経営者の判断としてその企業にとって中核となる業務を継続できるような体制を作り、企業を存続させるものであった。

 その後、事業継続マネジメントが国際標準化(ISO化)される中で、リスクマネジメント的な考えも加わり、現在ではリスクを想定し、それに対する対応策も事前に講ずるようになった。

本当に危機に直面した時に、正しい判断ができるか

 事業継続にしろリスクマネジメントにしろ、企業が「形式的に」計画を立てること自体は、さほど難しいことではない。最近は計画立案の参考となる多くの関連図書が出版されているほか、政府各機関からもガイドライン等が出されている。また、コンサルティングをしてくれる会社や団体もある。

 問題は、実際に危機が発生した場合、計画をいかに現場で実現させ、危機が過ぎた後、いかにその計画を改善していくかである。

 往々にして計画通りの危機は発生しない。その場合、計画を迅速にかつ適切に修正し対応できるかを決定づけるのは、経営トップも含めその場にいる人間の力であり、何よりも自らの頭で考えて決断し実行する能力である。

 この点に関して、海外の危機管理専門家からは、日本の企業の担当者への懸念をよく耳にする。

「日本の担当者は自分で考えず、他社のやり方をまねばかりし、横並びで対応を行う傾向がある。重要なのは想像力であり、自らの企業にとって何が必要で何が不必要なものか、どのような計画、戦略が最適かを考えて実践する能力と意志なのだが、彼らにはそれが欠けている」

 と苦言を呈している。

 民間でも大企業ともなれば「官僚的」体質が染みつき、無責任体制を生み、決断を遅らせ、事なかれ主義が過剰な取り組みを継続させるのである。

弱毒性インフルにヒステリックな対応を続けた日本

 2009年に発生したH1N1型新型インフルエンザへの対応が、これを端的に表している。