怖ろしいものと言えば、地震、カミナリ、火事・・・
今では親爺がすっかり威厳を失い、火事の次はテロリズム、あるいは新型インフルエンザか。しかし昔も今も、危機に直面した人間がその真価を問われることに変わりない。企業もまた然り。困難を乗り越えていかに事業を継続するか。それこそ経営者の使命と言うべきだろう。
2001年の米国「9.11」同時多発テロ以降、企業経営に重要課題が追加された。危機に陥った企業が速やかに事業を復旧させ、継続するにはどうしたらよいか。すなわち、事業継続マネジメント(Business Continuity Management=BCM)の構築を世界中の企業が迫られるようになった。
BCMは国際規格となりつつあり、日本の産業界も早急に対応を迫られている。その課題を探るため、東京理科大学と日本危機管理学会が2009年11月6日に都内で共催したシンポジウム「企業の危機管理の国際標準――BCMの最新動向」を取材した。
そもそも、事業継続(Business Continuity=BC)とは何なのか。日本危機管理学会の原田泉理事長(国際社会経済研究所主席研究員)は「事故、事件、災害などの際に重要業務を中断させないこと。また万一事業活動が中断した場合に、目標復旧時間内に重要業務を再開させること」と定義する。
その企業戦略が事業継続計画(Business Continuity Plan=BCP)であり、BCP策定・運用・見直しまでの運営がBCMと呼ばれている。
BCPの策定には先ず、企業経営者が危機発生後も「どうしても止められない製品・サービス」を特定しなくてはならない。これらの「最大許容停止時間」と復旧を制約する要素(ボトルネック)を見極めた上で、事業中断からの目標復旧時間を設定する。平時から危機を想定して緻密な計画をつくることが求められ、トップの高度な判断を要する経営問題なのだ。
従来、危機に直面した企業は「縦割り」で対処する傾向にあった。しかしそれでは満足な対応はできず、メディア対応などを誤って危機を深める結果を招いてきた。このため、「組織横断」でリスクを管理する体制の構築が不可欠になっている。