日本振興銀行が経営破綻し、政府は1000万円までの元本とその利息を保護する「ペイオフ」を初めて発動した。日銀出身の木村剛氏が中心となり創業したが、放漫経営からわずか6年で破綻した振興銀。それを預金保険が尻拭いする構図からは、ペイオフ制度に内在する根本的な矛盾が見えてくる。

 振興銀は極めて「特殊な銀行」。普通預金や当座預金を取り扱わず、銀行の本来業務である資金決済を行っていない。メガバンクなどに比べ、圧倒的に高い金利を付けて定期預金を集めまくり、そのカネを木村氏がつくった中小企業のネットワークに流していた。

 2010年9月10日朝、金融庁が振興銀に業務停止命令を発動。その直後、当局は「金融システム全体への影響はない」(野田佳彦財務相)、「わが国金融システムの安定性に影響を与えることはない」(白川方明日銀総裁)と強調した。

日本振興銀が破たん申請、初のペイオフ発動へ

初のペイオフ発動、自見庄三郎金融担当相〔AFPBB News

 振興銀は日本の決済システムから外れているため、金融庁や預金保険機構などは「破綻させても連鎖的な影響がない」と判断、Xデーに備えて極秘裏に「演習」を重ねていた。

 経済の大動脈である決済システムを守るための預金保険制度なのだが、それへの影響が限定的な「特殊な銀行」だから、ペイオフを史上初めて発動したというわけだ。

 一方、足利銀行など過去に破綻した「普通の銀行」にはペイオフ発動が回避され、公的資金投入で預金は全額保護されてきた。

 ペイオフに必要なコストは、大多数の健全な銀行の預金者が負担する保険料で賄われる。これでは、「特殊な銀行」の預金者だけを守るための制度である。高い預金利息まで保護する必要はないと思うが、政府関係者は「利息まで保護するのがグローバルスタンダードだから止むを得ない」という。