海外では、2008年にベルギーのビール会社インベブが「バドワイザー」で知られる米アンハイザー・ブッシュを買収。世界シェア25%を占める巨大ビールメーカー、アンハイザー・ブッシュ・インベブが誕生した。
アンハイザー・ブッシュ・インベブの年間ビール販売量は4230万キロリットルでダントツの世界1位。その後を、英SABミラーの2327万キロリットル、蘭ハイネケンの1668万キロリットルが追う。
キリンは382万キロリットルの11位、サントリーは133万キロリットルの20位で、欧米企業は文字通り、ケタ違いの大きさだ。仮に2社統合が実現していれば515万キロリットルの5位となり、「ようやく海外メーカーと戦える状況が整う」(大和田氏)はずだった。
世界の強豪と戦えず
キリンとサントリーの破局は、ビール業界以外でも高まりかけていた合従連衡の機運に水を差す恐れもある。統合に反対する社内勢力は「経営統合の難しさを吹聴するだろう」(大手証券関係者)。
しかし、デフレと少子高齢化で国内市場が頭打ちとなる中で、内需関連産業とて外需に頼らざるを得ない状況がますます強まってくるはすだ。とすれば、「国内は強いが海外では無名」の「お山の大将」的な企業のままで生き残ることは難しい。
時価総額ベースで比較すると、小売、食品、医薬品産業は、国内トップクラスでも世界の上位に食い込むことはない。盤石の強さを誇る医薬品最大手の武田薬品工業でさえ、世界のトップ10にすら入れず、世界一の米ジョンソン・アンド・ジョンソンとは5倍近い開きがある。
急成長が続くアジアでは購買力が高まっており、こうした有力市場でシェアを獲得できるかどうかは、これからの日本の内需関連産業にとっても生命線となる。もちろん、アジア市場には欧米企業も熱視線を注いでおり、彼らに互して戦うにはそれなりの企業規模が必要だ。
