米グーグルの書籍デジタル化を巡る集団訴訟。同社と米国の作家協会が合意した和解案についての公聴会が2月18日にニューヨーク連邦地裁で開かれ、海外メディアがその様子を報じている。

意見陳述、賛成5、反対は21

米下院公聴会、グーグルの書籍電子化に著作権局が懸念

イベント会場でデモされるグーグルの「ブックサーチ」〔AFPBB News

 それによると、この日意見陳述したのは26団体。そのうち賛成意見は5、反対意見は21だった。しかし判事は判決を出さず、各団体の発言を聴くにとどめた。

 これまで合計6800の作家と出版社が和解案からの離脱を表明しており、裁判所に提出された反対意見は500件に上る。

 現時点で判断を下すにはあまりにも膨大な数で、結論を出せないというのが理由のようだ。この日の公聴会は4時間に及んだという。

 賛成派は、グーグルと合意した米作家協会(Authors Guild)のほか、米国市場で電子書籍リーダー端末を販売するソニー、視覚障害者団体のナショナル・フェデレーション・オブ・ザ・ブラインド(National Federation of the Blind:NFB)、ミシガン大学図書館、米知的財産研究所など。

 グーグルは米国や英国の図書館にある世界の蔵書をデジタル化し、インターネット上で全文検索や閲覧をできるようにしている。著作権の失効したものは全文閲覧できるようにし、著作権保護期間内のものはその一部を表示し、書籍の購入先や所蔵している図書館を案内している。

 しかしグーグルによると、著作権保護期間内のものの大半が絶版になっており、そうした書籍の全文を閲覧するには、古書店や図書館に行って探すしかない。和解案では、それら絶版本のデジタル版をインターネットで有料で閲覧できるようにし、そこから得た収益の一部を著作権者に還元する。

 賛成派は、数百万冊という入手困難な書籍にインターネットを介してアクセスできるようになり、多くの消費者に恩恵がもたらされると主張している。また視覚障害者の団体は、グーグルの音声読み上げ機能が視覚障害者の助けになると和解案を支持している。

マイクロソフトはグーグルによる検索市場独占を懸念

 一方の反対派は、米アマゾン・ドット・コム、米マイクロソフト、各国の作家協会、著作権代理人、ペンシルベニア州政府、ドイツ政府、米司法省、米AT&T、プライバシー保護団体など、実に多岐にわたる。

 米ニューヨーク・タイムズの報道によると、電子書籍リーダー端末や電子書籍の販売も手がけるアマゾンなどが「著作権法を根底から覆す」と反対を表明しているほか、米司法省は先に提出した反対意見書と同じく、「当該紛争の解決という目的を著しく超えており、グーグルに膨大な利権を与えることになる」と述べている。