政府・与党内で「ゆうちょ銀行」の預金上限額(現行1000万円)を引き上げる案が浮上してきた。2009年11月2日「ミスター大蔵省の最後の大仕事」の中で、ゆうちょ銀を豚に例えて「太るか、死ぬしかない」と評したが、どうも政府は今以上にゆうちょを太らせたいらしい。
しかし、既に不健康なまでに膨らんだ巨漢。これ以上太るどころか、生命の維持すら危険な状態だ。民間企業としてスリムアップすることも、国営企業として焼け太りすることもできないゆうちょを待ち受けるのは、大きな身体を持て余して頓死する悲運なのかもしれない。
超低金利の国債で運用する非効率
改めてゆうちょ銀行の巨漢ぶりを検証してみよう。預金残高は2009年末で約176兆円。ピークの1999年末の約260兆円からは3割強も減少したが、それでも東京三菱UFJ銀行の約109兆円(2009年9月末)を大幅に上回る。
問題は収益性だ。今さら説明するまでもなく、ゆうちょの資産の大半は日本国債だ。安全度は高いが、その分、運用利回りは低い。多少ダイエットしたところで、依然として巨漢のゆうちょにとっては、栄養価の低い国債だけでは、どうにも身体がもたない。
巨体がふらつくのを防ぐためには、ダイエットをすればいい。しかし、政府・与党は雇用やネットワークの維持を求めており、贅肉を落とすどころか、もっと太れと言われているようなもの。
その手段となるのが、預金上限額の引き上げ。効率は悪くても運用資金は増える。とにかく大量に食べさせて太らせようという発想だ。
限度額アップだけでは預金は集まらない
ただ、預金限度額を1000万円から2000万円にすれば、すぐに体が倍になる、というわけにはいかない。そもそも、限度額アップに合わせてさらなる預金を集めるのは、容易なことではないのだ。
国民の資産が突然増えるわけではないので、ゆうちょが預金量を増やすためには、民間銀行に預けられている資金をシフトさせるしかない。わざわざ預け替える手間を取ってもらうためには、ゆうちょにそれなりの魅力がなければならない。