世界金融危機の背景にグラス・スティーガル法撤廃

北京市内の航空写真、五輪会場や市内一の高層ビル

五輪を契機に都市化が一挙に進んだ北京。「上海万博後」に不安の声も・・・〔AFPBB News〕

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 しかし、オオカミ少年たちが叫んでいる話は、これまでも長い間言われ続けてきたことだ。それなのに一向に「オオカミ」は来ない。と、思っていたら、全く別の「オオカミ」がやってきた。リーマン・ショック。それに端を発した大規模な金融危機が世界経済を奈落の底に叩き込んだ。

 こうした金融危機の再発を防ごうと米オバマ政権が対策を打ち出した。名づけて「ボルカー・ルール」

 カーター、レーガン政権下で、米連邦準備制度理事会(FRB)の剛腕議長の名をほしいままにしたポール・ボルカー氏。彼の従来の考え方をベースにしたこの対策は、これまで約30年にわたり続けられてきた米国の金融分野の規制緩和路線を、逆転させようというものである。

米リーマン・ブラザーズ、米連邦破産法11条を申請

3匹のオオカミは現れず、金融危機が世界経済を襲った(2008年9月に破綻した米リーマン・ブラザーズ)〔AFPBB News

 1930年代の大恐慌の反省から、米国では銀行と証券の業務を厳格に分離するグラス・スティーガル法が1933年に施行された。しかし、レーガン大統領時代から次第に緩和され、99年には撤廃されてしまう。

 これによって銀行にも伝統的な預貸業務だけでなく、証券売買やファンドへの出資などハイリスク業務が認められるようになり、金融機関は巨大化路線を歩み始めた。それが、今回の世界金融危機の背景にある。

金融の構造改革迫るボルカー・ルール

 だからこそ、「ボルカー・ルール」は金融機関の規模や業務内容に一定の制限を設け、銀行の業務は本来の公共的なものに絞ろうという考え方だ。

 しかも経営に失敗しても「大きすぎてつぶせない」状況をなくすために、市場からの借り入れに上限を設定しようとしている。これまでヘッジファンドなどによる投機で世界経済が揺さぶられるたびに検討された金融危機への対症療法ではなく、金融機関のあり方そのものを根本的に見直そう、という構造改革である。