少子化に伴い2005年に閉校した島根県飯南町の旧町立谷小学校。その校舎が地元住民の交流施設に姿を変えると、年間4600人もの来場者を集め話題になっている。その数は1875(明治8)年の開校以来、輩出した卒業生(1538人)の3倍、飯南町の人口(5569人、8月1日現在)の82.6%にも達する。
交流施設の名は谷笑楽校(たにしょうがっこう)。思わずほほえんでしまうネーミングに、レトロなたたずまいの木造校舎。廃校後の利用計画がない地域も多いなかで、なぜ谷笑楽校には人が集うのか。
地区住人の活動を廃校舎に集約
島根県飯南町役場の赤名庁舎から南西へ約6キロ。片側1車線のくねくねした県道の坂道を下ると、右手に一目で学校と分かる校舎がそびえ立っている。
1928(昭和3)年に建築され、県内で3番目に古い木造2階建て。
これが、閉校から5年が過ぎた昨春、国土交通省の補助事業で一部を改装し、リニューアルした谷笑楽校だ。
谷地区は95世帯、260人が生活し、65歳以上の高齢化率は47%。昭和10年代に比べ、世帯数は半減、人口は3分の1に減った。買い物は約12キロ離れた赤名地区へ行かなければならず、地区内の診療所は週に1回のみ。
典型的な中山間地域にある谷笑楽校になぜ人々が集まるのだろうか。
要因として、谷地区に存在する公民館や老人クラブ、婦人会、同窓会、神楽同好会など13団体のほぼすべての活動を、谷笑楽校で実施していることが挙げられる。
同校を運営する地域住民全員でつくる「谷自治振興会」の澤田定成会長(59)は「神楽や運動会、子育てサロンなど、地区内の行事をほとんど楽校で行い、多くの住民に参加してもらっているだけでなく、県内外から視察に来てもらっている」と説明する。
谷自治振興会は国の「過疎地域自立活性化優良事例表彰」で全国3団体に贈られる、総務大臣賞も受賞した。