21日および24日の米株式市場は、ガイトナー次期財務長官への期待感と、追加資本注入200億ドルに加え、不良資産3060億ドルに対する巨額の損失保証という異例の措置を含む米大手銀追加支援策発表を材料に、2日連続の大幅高となった。ニューヨークダウ工業株30種平均は、21日は前日比+494.13ドルで終値は8000ドル台を回復。24日は前週末比+396.97ドルで、終値は8443.39ドルとなった。

 ニューヨーク連銀総裁として今回の金融危機対応の最前線に立ってきたガイトナー氏の財務長官指名は、政策の連続性や、市場を熟知し経験が豊富なプロの登板ということで、市場の先行き期待を刺激した(金融市場の規制強化に人一倍熱心なボルカー元FRB議長が指名されなかったことへの安心感もあるだろう)。また、米大手銀に対する追加支援は、市場の目下の懸案事項について、「大きすぎて潰せない(too big to fail)」という金融サミットで再確認された原則を守るという点で「言行一致」が示されたことから、市場の安心感につながったと言える。

 だが、これで金融危機は峠を越えたかといえば、そうではあるまい。筆者は引き続き、先行きの事態悪化を警戒する見方を取っている。併せて、経済指標悪化、特に米国の個人消費およびその重要な基盤である雇用情勢の悪化が続いている点を重視している。「過剰消費崩壊」のトレンドに変わりはない。

 共同通信は今回の米大手銀追加救済策について、「不安ぬぐえず泥縄対応」と題した記事を配信した(11月25日付 東京新聞掲載)。記事には、「7000億ドル(約66兆7000億円)の公的資金枠を使った最初の資本注入では同社の経営不安や市場の懸念をぬぐえなかったためで、金融危機対応における米当局の泥縄的な一貫性のなさを浮き彫りにした格好だ」となる。筆者が抱いている考えも、全く同じである。

 追加救済策の対象になった米大手銀の株価が歴史的な低水準まで急落し、発表されたリストラ策も市場の信頼回復につながらない中で、金融安定化法をどう使っていくかという基本的な部分についてさえ戦略性が欠如したまま、市場の圧力に対して後手に回る形で、かなりの程度場当たり的に対策を打ち出すという、信用不安対応の迷走が続いている。金融安定化法を用いた不良資産買い取りをいったん断念したものの、今度は特定の銀行についてのみ不良資産に政府保証をかけるという手法は、迷走以外の何ものでもない。