「この夏は、高校生の娘を上海の大学で語学研修させたんですよ」。自称「町工場の親爺」さん、上海に拠点を持って6年になる埼玉県の精密機械メーカーの経営者Aさんはこう近況を語った。
中国抜きで将来は語れない――そうした考えを持つ人はビジネスの世界を超えて、教育の場にまで広がりつつある。
また、先日、上海でこんな日本人の親子と出会った。
「うちのせがれは高校生なんですが、今後は中国の大学への進学を考えているんです」
上海の現地法人に駐在する父親が、夏の休暇をとって息子と2人で中国の大学巡りをしているのだ。グローバルビジネスの最前線で働く父親たちは、自分が受けてきた教育に限界を感じている。せめて自分の子どもたちには、国際舞台で闘える人材になってもらいたいと願っているのだ。
「今後、社会で必要とされる人材像を考えた時に、日本の教育だけではもう限界だと思うんです」(前出の駐在員)。今後の進学先は、日本なのか、アメリカなのか、はたまた中国なのか。親心は揺れる。筆者は「せがれ」と紹介された高校2年生の男子生徒に「いいお父さん持って幸せだね」と声をかけずにはいられなかった。
中国を目指す各国留学生たちの思惑
上海市内の大学では今、何千人という規模で各国からの留学生を受け入れている。
どこでも目立つのは韓国人だ。上海では大学周辺からタクシーに乗れば、決まって「韓国からの留学生?」と訊ねられる。それほどに韓国人留学生はプレゼンスを増してきているのだ。韓国総領事館によれば、上海市における長期滞在者は2009年度で4万5000人(登録ベース、出張者などの短期滞在者は含まない)、そのうち留学生は1万5000人にも上る。
中国の大学に留学してくるのは、もちろん韓国人だけではない。東南アジア、中央アジア諸国のみならず、欧米やロシア、アフリカからもなだれ込んでくる。