敗戦以来、何事も米国流の生活様式に憧れを抱いてきた日本人が珍しく追随に二の足を踏み続けてきたことと言えば、クレジットカードによる支払いだろう。
1960年3月に日本初のクレジットカードが丸井で発行されてから、間もなく50年になる。日本クレジット協会によると、現在の有効発行枚数は約3億2000万枚。成人1人当たり3枚のカードを持っている計算だ。しかし、半世紀という長い歴史や日本経済の規模、質の高い決済インフラなどを考えると、クレジットカード産業が到達したレベルは決して満足のいくものではない。
家計の可処分所得に占めるカードショッピングの比率(カード利用率)は、企業の利用分を含めても米国の半分の13%程度。デビットカードがそっぽを向かれていることもあって、いまだに85%の取引は現金で決済されている。これほどの「現金社会」は先進国では稀有な存在だ。
クレジットカード取扱高、初のマイナス成長に転落
もっとも、カード利用率はここ10年間で倍増した。経済の低迷が長期化している中で成長が続いた最大の要因は、ネットショッピングや病院、公共料金などカード支払いが可能な場所が増えたことだ。
だが、カード保有率はここ数年、成人人口の80~90%で安定し、保有枚数にも飽和感が出てきた。節約志向を強めるカード保有者は優待メリットを最大限生かそうと、よく使うカードを1枚に絞り込み、2番目以下のカードの稼働率は低下する傾向にある。
「カード利用範囲が拡大途上にあった今までは、景気低迷の影響が見えにくかった。病院や公共料金などへの導入が一巡し、未開拓分野がなくなった後が正念場だ」と厳しい見方を示す業界関係者は少なくない。
そうした危機感を裏付ける兆候も実際に表れ始めている。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、2008年のクレジットカード取扱高35兆1984億円のうち、規制強化で不振が続くキャッシング業務を除いた販売信用業務は前年比8.7%増の30兆1385億円で、伸び率は1けた台に鈍化した。
2009年に入ると、公表されている11月速報分までのうち前年同月実績を上回ったのは1月と4月だけ。特に、主力の百貨店・スーパー、その他小売店、飲食店での取扱高は軒並み前年割れが続いている。消費委縮の影響がカードショッピング取扱高にも容赦なく波及した形となっており、半世紀の歴史で初めてのマイナス成長転落が確実な情勢だ。