少し前の話になるが、経済協力開発機構(OECD)は2009年5月4日、「一目で分かる社会(Society at a Glance)2009」というリポートを発表した。睡眠時間から肥満率まで、様々な角度からOECD加盟国のうち18カ国の社会状況を比較調査したもので、興味深い内容を数多く含んでいる。

 日本の新聞はこのリポートについての記事を掲載しなかったようだが、米ニューヨーク・タイムズが記事を書いたようで、それを中国の国際金融報が転載。さらにそれを人民網(人民日報オンライン版)の日本語ページが、「食べる速度が速いほど経済成長も速い? OECD報告」という記事の形で紹介。食べるスピードが速い国、太った人が多い国ほど経済成長率が高い傾向があることがデータで確認された、とした。ただしそうした表面的な相関関係は必ずしも因果関係の存在を示すものではない点にも、この記事はしっかり言及していた。

 2009年7-9月期の名目GDPが1991年7-9月期以来、18年ぶりの水準にまで落ち込み、同年冬の大企業ボーナスが日経新聞調査で20年前の水準になるなど、「失われた20年」を経て、前例のない苦境に陥っている日本経済。そうした中で日本人のライフスタイルは、他の国と比べた場合、どのような特徴を有しているのだろうか。筆者なりにコメントしてみたい。

睡眠時間

 OECDがデータを比較している18カ国のうちで、1日当たりの平均睡眠時間(15歳以上が調査対象)が最も長いのは、フランス(530分)。9時間近く睡眠を取っているわけで、日本人の感覚で言えば、子ども並みの長さである。もっとも、「愛の国」とされるフランスのデータであるだけに、本当に睡眠に充てられているのか、疑問に感じてしまう面もあろう。以下、米国(518分)、スペイン(514分)、ニュージーランド(513分)、トルコ(512分)、オーストラリア(512分)の順である。

 ここで1つ気がつくのは、出生率が高い国ほど睡眠時間が長い傾向が観察されるということである。OECD報告書にある2006年のデータで比較すると、フランス(1.98)、米国(2.10)、ニュージーランド(2.01)、トルコ(2.18)、オーストラリア(1.81)という具合。一般に、中高年は若者よりも、睡眠時間が少なくてすむことが多い。人口構成の違い(若年人口が多いか、老年人口が多いか)が、平均を取った睡眠時間のデータに影響しているのだろう。ただし、睡眠時間第3位のスペインは、例外的に出生率が低い(1.38)。同国の場合は、シエスタ(昼寝)という伝統的な生活習慣ゆえの長時間睡眠だと考えられる。

 逆に、睡眠時間が最も短いのは韓国(469分)。次いで日本(470分)、ノルウェー(483分)、スウェーデン(486分)、ドイツ(492分)、イタリア(498分)の順になっている。韓国と日本が平均睡眠8時間未満である。

 これら短時間睡眠の国々には、出生率の低い国が数多く含まれている。OECDの2006年データで見ると、韓国(1.13)、日本(1.32)、ドイツ(1.33)、イタリア(1.35)となっている。ただし、ノルウェーとスウェーデンという北欧2カ国については、出生率はそれぞれ1.90、1.85であり、高めである。緯度が高いところに国土が位置しており、白夜があることが影響していると考えられる。