米大統領、金融危機回避にむけた改革の必要性を強調

「市場原理」とともに去りぬ…〔AFPBB News

世界経済に暗雲が立ち込める中、先進国や新興国の首脳がワシントンで一堂に会し、11月15日のG20金融サミットは危機克服に向けて結束を宣言した。しかし、その内容は市場に対する規制・監督の強化や財政・金融政策の出動など模範解答の域を出ず、これで市場の混乱が急速に終息するはずもない。議長を務めたブッシュ米大統領では危機に対処できず、現体制の限界が鮮明になった。今回のサミットは、自由放任を原理とする「ブッシュノミクス」の終焉を宣告したと言えよう。

 サミット閉幕後、ブッシュ大統領は「大変実り多い首脳会合だった」と上機嫌で自賛した。麻生太郎首相に至っては、「歴史的なものだったと後世言われるだろう」と表現してみせた。

麻生首相、ドル基軸維持への支持を強調 金融サミットで

「読み間違い」ご用心!〔AFPBB News

 オバマ氏当選後、ブッシュ大統領は「8年近く、戦略どころか筋の通った英語文すらろくに話せない人物が最高指導者を務めていた」(ニューズウィーク誌)などの厳しい批判を浴びている。首相も「ふしゅう=踏襲」「みぞゆう=未曾有」といった読み違い(?)連発で “株価” を下げていたから、日米首脳はともに金融サミットを晴れの舞台に演出したかったはずだ。

 しかし、サミット首脳宣言は金融市場の安定化に向けて「あらゆる追加的措置」「複雑な金融商品の開示拡大」「信用格付け会社への強力な監督」など抽象的に羅列しただけ。次回会合を「ブッシュ後」の来年4月末までに開くことで合意したが、それまで危機が一段と深刻化しないよう祈るほかない。

「市場の失敗」認めぬ大統領

 そもそも、危機の震源にいるブッシュ大統領が原因分析や監督責任の明確化を回避、あるいはこうした必要性を認識しないから、この程度の宣言しか採択できなかったのだろう。

 「米国のモーゲージ(不動産担保融資)市場の規制が不十分だから、危機が発生したと非難されているが、規制の強い欧州の多くの国でわれわれと同じ問題が起きているではないか」。ブッシュ大統領は金融サミット当日の15日付米紙ウォールストリート・ジャーナルに寄稿し、開き直りとも言える持論を展開している。

 この中で、大統領は「自由市場が失敗したから、危機が起こったわけではない」と断言。自由市場資本主義がなければ、移民はレストランを開業できないし、iPodが登場することはなく、第2次大戦後の日本や韓国の繁栄もなかったなどと指摘している。

 ブッシュ大統領は自由放任に任せてよい分野と、規制が必要なそれ以外の峻別ができない。あるいは「小さな政府」を標榜するあまり、意識的に峻別を避けてきたのだろう。「要規制」の代表格である「金融」の特異性に対する認識が甘いため、後手後手の対症療法に陥り、危機の深刻化を許した。

 例えば、金融商品の代表格である「預金」に関しては、米国はじめ各国は一定額あるいは全額を保護する措置を講じており、政府は破綻銀行の預金者への預金払い戻しに応じなくてはならない。

 一方、旅行会社や英会話学校などが潰れると、消費者が前渡し金を返してもらえず、泣き寝入りするケースが目立つ。この点で預金商品とその他のモノ・サービスとは性格が決定的に異なり、「自由市場資本主義」では一括りにできない。