CEO探しへ政府支援返上

米バンカメ、09年1-3月期は大幅増益 貸倒引当金も急増

年末で退任するケネス・ルイスCEOの後任が見つからない・・・〔AFPBB News〕

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 バンカメの総資産は米銀最大の2兆2510億ドル(約199兆円)を誇るが、1980年代までは、ノースカロライナ州シャーロットを拠点とする一地域銀行に過ぎなかった。合併を繰り返して全米に支店網を築いたが、ウォール街を舞台に権勢を振るってきたJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなどに比べると、「田舎者」「成り上がり」のイメージがどうしても否めない。

 そんなバンカメの歴史を象徴する経営トップが、2001年から最高経営責任者(CEO)を務めるルイス氏だ。1969年にバンカメの前身であるノースカロライナ・ナショナル・バンクに、クレジットアナリストとして入行後、出世競争を生き抜いてきた叩き上げだ。

 赤ら顔に大きな目は、業界誌アメリカン・バンカーが決める「バンカー・オブ・ザ・イヤー」に2度輝いた押し出しの強さを物語る。2008年9月15日、リーマン・ブラザーズが経営破綻した騒動に乗じる格好で、悲願だった証券大手メリルリンチの買収に成功。その経営判断が自らの首を絞めることになるとは想像もしなかったに違いない。

米バンカメ、09年1-3月期は大幅増益 貸倒引当金も急増

この1年はサンドバッグ状態でした(バンク・オブ・アメリカのケネス・ルイスCEO)〔AFPBB News

 統合決定後に発覚したメリルの巨額損失は公的資金の追加注入につながり、メリル幹部への巨額賞与支給は不況に苦しむ国民を敵に回すことになった。「メリル買収は間違っていない。必ず収益が出る」と繰り返すルイス氏をあざ笑うかのように、バンカメの株価は急落。4月の株主総会では会長職を追われる憂き目に遭った。

 5月初め、連邦準備制度理事会(FRB)による特別検査(ストレステスト)で資本不足を指摘された。メリル買収をめぐる情報開示義務違反を問われて召還された6月の米議会公聴会では、議場中央で与野党議員の集中砲火を浴び、言葉に詰まりながらの弁明に追われた。

 そして9月、ルイス氏はついに退任を表明。だが、年間報酬ゼロでサンドバッグ状態となった同氏の苦労ぶりを知っていれば、バンカメの舵取りを担おうという殊勝な人材は現れるはずもない。

 突然、降って湧いたようなバンカメの公的資金完済宣言は、新CEOを迎えるため、報酬制限の撤廃を優先した巨大銀行と政府の妥協策だ――と誰もが納得。結局、返済を果たして1週間後の16日、リテール部門に責任者ブライアン・モイニハン氏(50歳)の内部昇格が決まり、一件落着した。