米金融大手シティグループが公的資金を返済、政府管理下から脱することが決まった。
2008年秋に金融危機が深刻化した後、同社に投じられた血税は総額450億ドル(約4兆円)。シティは見返りに優先株を米政府に引き渡し、そのうち250億ドル分は2009年7月末までに普通株に転換され、米国民は好むと好まざるとにかかわらず、シティの発行済み株式の34%を握る大株主にさせられてしまった。
そのシティが、自力増資に踏み切り、残る200億ドル分の優先株を買い取る。一部リスク資産に対する政府の損失保証も返上。さらに、米政府は保有するシティ株を来年末までに全額売却する。シティはまるで、ピカピカの健全金融機関になったかのような扱いを受けているのだ。
金融大手が相次ぎ公的資金返済へ
苦しいはずのシティの台所事情にどんな奇跡が起きたのかと訝っていたら、前後して、米銀大手バンク・オブ・アメリカも公的資金450億ドル(約4兆円)を一気に完済。追随して同ウェルズ・ファーゴも全額返済方針を表明した。
これで、2008年10月にブッシュ政権(当時)が公的資金を一斉注入した大手金融機関9社すべてが政府の庇護下から抜け出すことになった。
政府支援は、信用補完というメリットがある一方で、政府による経営介入というデメリットを甘受しなければならない。特に、巨額の公的資金が投じられたバンカメ、シティ、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、ゼネラル・モーターズ(GM)など7社は、役員報酬などに厳しい制限を課されてきた。
国民批判に応えるため、オバマ政権が「報酬特別監督官」というポストを新設してまで導入を決めた厳しい措置だが、その強硬姿勢が面倒な問題を引き起こした。年末の退任が決まったバンカメのケネス・ルイス最高経営責任者(62歳)の後任探しが難航してしまったのだ。