つい半年前まで楽観論と悲観論が交錯していた中国経済が再び高成長を始めた。本年7~9月のGDP成長率は9%に近づき、「V字型回復」は現実のものとなりつつある。
2009年の年間成長率8%はほぼ確実に
今回は珍しく一切「政治の話」抜きで、ごくオーソドックスに各種マクロ数値に基づいて中国経済の現状を考えてみた。もちろん、あくまで中国の統計数値が正しいという条件つきの話ではあるが。
10月22日に国家統計局が発表した2009年第3四半期の成長率は8.9%、1~9月の成長率も7.7%となった。この数字は大方の予想通りであり、中国政府の2009年目標である「8%前後の成長」の達成は確実と見られる。
IMF(国際通貨基金)、世界銀行(世銀)などの国際機関は中国の成長率を、2009年第4四半期で10%前後、2009年全体では8.5%前後、2010年には9%程度と予測している。
いずれも以前の予測を上方修正したもので、「中国経済は2008年秋に底を打ち、再び成長に転じた」とする見方を裏づけている。
良好なマクロ数値
中国経済の回復は予想以上に力強いものだ。代表的な数値をご紹介しよう。
(1)3月以来PMI(製造業購買担当者景気指数)が50を超え、鉱工業生産も急速に回復
国家統計局によれば、中国のPMIは昨年11月に40を割り込んでから上昇に転じ、本年10月には55.2にまで回復している。PMIが50を超えれば景気上向きとされるので、中国経済は過去8カ月連続して上昇傾向が続いていることになる。
(2)2009年を通じマネーサプライ(M2)は高水準で増加する一方、消費者物価は最近ほぼ横ばい
中国人民銀行によれば、2009年のM2の伸び率は前年同期比概ね28~29%で高止まりを見せている。2008年に一時9%という「危険水域」に近づいた消費者物価指数(CPI)も最近は概ね安定しているようだ。
(3)旺盛な固定資産投資
成長の牽引車は鉄道・道路・公共インフラ・不動産などの固定資産投資だ。一時は大幅下落が伝えられた不動産価格も概ね金融危機前の水準に戻り、むしろ今後は不動産バブルの再来が懸念されるという。ちなみに、昨年ピークの6000余りから2000を割り込んだ上海総合指数も最近では3300程度まで戻している。