博多ラーメンの替え玉発祥の店として知られている「元祖長浜屋」(福岡市中央区)にそっくりのラーメン店「元祖ラーメン長浜家」(こちらは「家」)の看板が、その真向かいに誕生したと、いま話題になっている。

 この店は、元祖長浜屋の元従業員が始めた店で、味のベースも値段もスタイルも元祖長浜屋と同じだという。しかし資本関係も、のれん分けでもないまったく別の店だというからややこしい。

 元祖長浜屋では、入店すると黙っていてもラーメンが出てくる。1杯400円で、めんがなくなれば「替え玉」を追加注文できるという仕組み。

 元々は博多区築地本町の魚市場の周辺にあったいわゆる「市場ラーメン」で、魚市場が移転するのに伴って現在の場所に移った。長浜ラーメンが極細麺になっているのは、素早く茹でて市場の競りの合間に食べてもらえるように、という気遣いからだ。

 この元祖長浜屋は2007年6月に突然休業してしまったが、ファンが存続を求めて行った署名活動などに説得され、6月中に再開したという超人気店。

 ところが、人員配置の考え方や待遇などで折り合いがつかなかったとの理由から、28年間も働いてきた元従業員らスタッフ数人が離脱。新たに店舗を設けることになったというのが、ことの顛末だ。

 こうした元祖争いは、長浜ラーメンばかりではない。例えば大阪・千日前にある「名物カレー」(ご飯とカレーを混ぜ合わせ、その上に生卵をかけた料理)で有名な自由軒と、全国展開やレトルトカレーなどで著名な「せんば自由軒」。

 1910(明治43)年に吉田忠次郎氏が大阪・難波新地に「自由軒」を開業した。その後、自由軒の2代目・吉田四一の五男の吉田憲治氏が独立して、大阪・船場に開業したのが「せんば自由軒」。つまり、血のつながりはあるが、経営的なつながりはない。

京都・舞鶴と広島・呉の「元祖肉じゃが論争」

 また、こうした店舗同士だけではなく、地域を巻き込んでの元祖争い、あるいは地域間競争の様相を示しているものも少なくない。その典型例は、京都府舞鶴市と広島県呉市の「元祖肉じゃが論争」だろう。

 95年に舞鶴市と同市の観光協会、商工会議所が、「舞鶴は肉じゃが発祥の地」を宣言した。ところが98年には、呉市も「呉市の鎮守府こそが肉じゃがの元祖」と、肉じゃが発祥の地であることを主張した。両者は今なお互いに元祖を主張している。