「選挙(運動)についても、インターネットを使って政策を国民に情報提供し、選択の自由、選択の権利をさらに行使してもらえるよう、検討を指示している」――。11月4日の原口一博総務相の会見での発言は、日本にもいよいよネット選挙の時代が訪れようとしていることを示唆した。

 現行の公職選挙法は、ホームページやブログの更新や、掲示板への書き込みなど、選挙期間中の候補者や有権者のインターネット上での活動を禁じている。国民の間にも誹謗中傷や「なりすまし」などのトラブルを懸念して反対する声が高かった。

 野党時代の民主党が2006年6月にネット選挙運動を解禁する公選法改正案を国会に提出した際も、「なりすまし」防止策として、ウェブサイト開設者と電子メール送信者に名前とメールアドレスの表示を義務づけた。さらに、違反した場合は選挙管理委員会が表示中止命令やプロバイダーに削除依頼を行い、2年以下の禁固または50万円以下の罰金の罰則規定を設けていた。

民主党幹事長に小沢氏

公職選挙法改正に前向き 民主党・小沢一郎幹事長〔AFPBB News

 とはいえ、海外のサーバーを使った場合は開設者を特定するのが困難で、不利益を受けた候補者の救済措置は完璧とは言い難い。また、ネットを利用しない有権者との情報格差問題も課題として残っており、自民党の反対などにより廃案とされてしまった。

 しかし、民主党は与党になった。10月5日付コラム「こんなに違う、米中政府のSNS対応」で、鳩山由紀夫内閣がネットを介して国民との新しい関係を構築することに対する期待を述べたが、原口総務相発言に象徴されるように、少しずつ「チェンジ」の兆しは見え始めている。小沢一郎幹事長もネット利用や戸別訪問の解禁など選挙運動の自由化を盛り込んだ公選法改正案を来年の通常国会に提出する意向を表明しており、解禁に向けた法改正が現実味を増している。

楽天やグーグルが政治参加のためのサイト開設

 自ら呼び水になろうというのが大手ネット企業だ。2009年7月13日、グーグル日本法人が「未来を選ぼう2009」プロジェクトをスタート。その第一弾として、ネットを通じて有権者と政治家が対話するための場「未来のためのQ&A」を開設した。有権者が、政党・政治団体への質問を投稿し、ネット投票で選ばれた上位5問について、政党からの回答を呼び掛けた。