エコは景気回復の先導役

気候変動サミット開幕、鳩山首相が温室ガス25%削減を明言

鳩山由紀夫首相は9月22日、米ニューヨークで開かれた気候変動サミットで日本の温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減する方針を表明した〔AF

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 第2には、金融危機後に各国政府が導入した環境分野での経済対策が産業界の対応を加速させた点だ。エコカー購入補助を初めとする環境関連のさまざまな支援策によって、環境関連産業が雇用機会の創出や、景気回復の先導役としての役割を期待されることになった。

 グリーンニューディールを提唱するオバマ政権の誕生が推進力となり、鳩山政権も「温室効果ガスの排出量の25%削減」提案を行い国際社会からの評価を獲得した。こうした各国の対策は、エネルギー効率の良い車や住宅の購入促進を通して短期的に景気回復を支えたのみならず、企業の中期戦略に重要な影響を及ぼしている。

 省エネルギーや新エネルギーへの対応力が企業間競争の重要な要素だ。そして、先進各国が低成長を余儀なくされる中でも、原子力、風力発電、太陽光発電、バイオ燃料などは数少ない成長分野と見なされている。

 日産自動車、三菱自動車が電気自動車(EV)の開発に注力する方針を表明するなど、成熟産業の自動車業界においても、「エコ」は成長分野だ。ガソリンエンジン車から、EV、ハイブリッド、燃料電池など新たな動力機関へのバトンタッチが加速している。

原油高止まりで、新エネ開発にインセンティブ

トヨタ、新型プリウスを発表 北米国際自動車ショー
ゼロ・エミッションの電気自動車、国内各社が実用化目前

自動車各社は、ハイブリッド車や電気自動車(EV)の開発に力を入れている〔AFPBB News

 第3に、原油価格の1バレル=100ドル定着が改めて確認された点。2008年夏まで急騰を続けていた原油価格は、金融危機後に30ドル台まで下落し、2009年3月以降の株価回復局面で再び上昇基調を強め、足元は80ドル近辺で推移している。

 世界経済が完全回復していない中での原油価格の上昇は、中国など新興国の需要拡大がエネルギー価格を中期的に押し上げるトレンドを改めて認識させた。IEA(国際エネルギー機関)は、11月10日発表の「世界エネルギー見通し」で、新興国の一定の需要拡大を前提に、2030年の原油価格が1バレル=190ドルまで上昇すると予測した。

 原油価格が高止まりしたり、さらに上昇する可能性が高まれば、新エネルギー開発投資のインセンティブとなる。新エネ開発は環境イメージだけでは進まない。政府からの補助金(もしくはペナルティー軽減)、またはエネルギー価格上昇のいずれかによって経済合理性が確保されることが前提となる。9月のピッツバーグ・サミットでも、「非効率な化石燃料補助金を段階的に廃止する」といった、政策による環境負荷の小さい新エネルギーへの誘導が示された。