前回、筆者は「日本人も羨む『中国の住宅』最新事情」という記事で、自分の成功や満足のために、故郷から数百キロあるいは数千キロも離れた遠い都市に移住する中国人の姿を紹介した。

沿岸部の大都市から地方都市へ波及する住宅建設ブーム

上海の新市街。年代ごとに街の様子が変化している

 今回は、前回とは趣を変え、中国全土というマクロ視点ではなく、中国の一都市というミクロ視点で中国の住宅事情を見てみたい。

 仕事を求めて遠く故郷を離れるのではなく、地元密着型の人たちでも、実は中国の人々は人生で何度か引っ越しをするのが当たり前なのである。そうした傾向が中国で住宅建設が増えるベースにある。

 上海や深センで住宅建設ラッシュが起こり、住宅バブルが起こったのは日中のメディアで報じられた通りだ。その建設ラッシュは現在、上海や深センなどの沿岸部の街だけでなく、中国内陸部の各省にまで波及している。それも省都だけでなく、第2、第3の街まで住宅の建設ブームに沸いている。

 このブームは、単に中国経済が発展しているという理由だけでは説明がつかない。中国人の引っ越し好きという性向が、経済発展と相まって住宅建設ブームを引き起こしているのだ。

古い住居が都市の中に取り残されて「城中村」となる

北京の旧市街。近代的になった街の中にもこういうところが数多く残っている

 中国のどの都市でも少し中心街から離れていけば、区画整理で古い建物が集中する地域が瓦礫の山となっていっている場面に出くわすだろう。

 そこでは古い建物が、大型の建機で次々になぎ倒されていく。時には歴史的建造物までもが破壊され、その跡地には最新建築技術を駆使した大規模なオフィスビルやマンション群、政府庁舎が建てられる。

 住民の権利が強く守られていて、道路を1つ作るのにさえ多大な時間とコストがかかる場合がある日本に比べて、都市の再開発という面にだけ立てば、ダイナミックだ。成長著しい中国の原動力の1つと言えるかもしれない。

 もっとも、いくら中央や地方の政府が強いからと言っても、さすがに何でもありと言うわけにはいかない。例えば、都市内のすべての古い住宅街を一掃するには政府の力の限度を超えている。