「戸籍に縛られていなければ、しがらみなくその時々で住みよい土地に移動しようとする中国人は少なくない。若い時は富を求め上海や深センなどの大都会に、リタイア後は豊かな自然環境を求めて田舎に住む」
狭い住宅が人気? 上海、北京、深セン・・・などの大都市
こうした傾向が、ポータルサイト新浪(Sina)とREICO工作室が今年共同で発表した中国不動産報告書によって明らかになった。
使用しているデータが2000~2005年の国家統計局の統計から引用しているため少々古さはあるが、中国家事情を知るうえで今もなお有用だと中国在住の筆者は感じているので紹介したい。
国家統計局の最新データによれば、2008年の1月から10月までの間に新築の住宅価格が16.6%、中古の住宅価格が17.5%と、最大の値下がりを記録した深セン。それでも中国の都市の中では地価が最も高い地域の1つであることに変わりはない。
地価の高さを象徴するように、住宅の平均面積も60平方メートル未満と中国全土で最低を記録している。また深センほど狭くはないものの、天津や上海、北京も60平方メートル程度の “家が狭い街” となっている。
実は、中国全体ではこのところ、住宅の平均面積が増えている。ところが、深センでは2000年から2005年までの5年間で住宅面積が減少してしまった。減った都市は深センと、上海の対岸に位置する浙江省寧波のわずか2都市しかない。
深センに住むのは香港人か他省から来た人たちばかり
理由は何だろうか。それはこれらの都市が持つ特殊事情と言える。
深センという街は、以前は隣接する香港へ水道水を供給する水源という以外、ほとんど何もない地域だった。ところが経済特区に認定されて税金をはじめとする様々な優遇政策によって、急成長を遂げた。香港へは鉄道や自動車で1時間以内という距離も急成長に一役買った。
そのため、深センに居住する人々のほぼすべてが他省、他市からやってきた外地人と香港人だ。住宅価格を考える場合、深センの住宅価格を引き上げた要因としては、住宅が値上がりし過ぎて香港では買えなくなった若い香港人によるところが大きい。
彼らは、香港に比べればはるかに格安の住宅を深センに購入し、毎日ボーダー(国境)を越え通勤している。一方、深センに住む大陸の中国人居住者は、深センにある企業に勤めるために中国全土からやって来た人ばかり。そのため、大陸系住民に関しては若い住民がほかの都市に比べて多いことが特徴だ。