日銀は10月30日、「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を公表した。

 内容を読むと、日銀の景気見通しについては、従来よりも強気方向に傾斜したという印象を受ける。「世界経済の回復基調が途切れる可能性は低い」「今後、在庫調整の影響が後退していくほか、内外における需要刺激策の効果が減衰するにつれ、生産の増加ペースが一時的に弱まる局面はありうるが、世界経済の緩やかな回復傾向が持続する限り、生産の増加基調は失われないものとみられる」といった記述が見出される。世界経済の不確実性については、「一頃に比べ低下したとはいえ、依然高い状況にある」とされた。「当面、景気・物価の下振れリスクを意識しつつ」という表現が、金融政策運営についての記述から消えている。2011年度には、「わが国の成長率は、潜在成長率を明確に上回るペースまで高まる見通し」であるとされた。実際、2011年度の実質GDP見通し(政策委員大勢見通し中央値)は前年度比+2.1%という、世間相場から見て高めの数字になっている。鳩山由紀夫政権が打ち出している政策の効果をどこまで織り込んだ数字なのかは判然としないものの、経済企画協会が10月13日に発表したESPフォーキャスト調査で、民間エコノミストによる2011年度の実質GDP見通しが平均で前年度比+1.33%であったことに比べると、日銀が公表した+2.1%というのは、いかにも強気である。

 一方、市場が最も注目していた2011年度の消費者物価指数(CPI)コア見通し(政策委員大勢見通し中央値)は、前年度比▲0.4%になった。CPIコアはこれで、2009年度から3年連続のマイナスということになる。こちらは、市場の予想に沿った数字と言える。共同通信が市場関係者を対象に行ったアンケート調査「金利羅針盤」で、展望レポートの2011年度CPIコア見通しが何%になると予想するかという質問への回答で最も多かったのが、前年度比▲0.5%と▲0.3%だった(ともに18社のうち3社が予想)。ただし、日銀政策委員はリスクについて、▲0.4%よりも下振れる方向をみていることが、リスクバランスチャートの形状からうかがえる。