今や、大手報道機関は「構造不況業種」と言っても、過言ではないだろう。インターネットの普及で、読者は新聞を購読したり、決まった時間にテレビの前に座っていなくても、簡単に情報を入手できるようになってしまった。読者・視聴者が減れば、当然、広告収入も減少する。しかし、報道は労働集約型産業だ。取材は、機械化も自動化もできない。

 とはいえ、大手メディアにとって、「金食い虫」の国際ニュース報道部門のリストラは火急の課題となっている。背に腹は代えられず、米国では、誇り高き大手報道機関が、自前取材へのこだわりを捨て、新興のオンラインメディアからニュース供給を受ける例が相次いでいる。

ベテラン記者揃えた実力派の新興勢力

 米3大ネットワークテレビ局の一角・CBSニュースは、ボストン(マサチューセッツ州)に本拠を置く独立系国際ニュースサイト「グローバルポスト(GlobalPost)」と提携した。

 グローバルポストは2009年1月、東海岸のニューイングランド・ケーブル・テレビを経営していたフィル・バルボニと、ジャーナリスト出身チャールズ・セノが共同で創業した会社だ。現在は、50カ国以上に70人のジャーナリストを抱え、世界各地からニュースを伝えている。

 所属しているジャーナリストは、かつて新聞社やテレビ局の海外支局で花形記者として活躍した経験があるベテラン揃い。新興メディアとはいえ、企画力、取材力は大手マスコミに遜色はない。なにしろ、共同創業者のセノ自身も、東海岸の名門新聞紙「ボストン・グローブ」のヨーロッパ支局長や中東支局長を歴任、ジャーナリズムのあるべき姿には一家言ある人物だ。

 CBSは、オンラインニュースサイトの「プロパブリカ(ProPublica)」とも契約、1968年から続く看板番組「シックスティー・ミニッツ(60Minutes)」で、プロパブリカの特ダネを放送した。

 プロパブリカは、ウォールストリート・ジャーナル紙で編集局長を務めたポール・スタイガーとニューヨーク・タイムズで活躍したステファン・エンゲルバーグが牽引する非営利の報道機関だ。読者や資産家からの寄付で運営費を賄い、汚職や弱者からの搾取などの調査報道に取り組み、サイト上で取材成果を発表するのが基本スタイルだ。