前回に引き続き、スウェーデンの子育て事情を紹介する。(記事中の写真も筆者撮影)
わが家では、朝6時半に子どもたちを起こす。歯を磨かせ、服を着せて小学2年生の長男を学校へ、下の娘2人はダーギス(Dagis)と呼ばれる幼稚園へ連れて行く。ダーギスは自宅の2軒隣なので、5歳と1歳の娘たちとポクポク歩いて行っても2分とかからない。
朝7時半までに行けば、学校もダーギスもご飯を食べさせてくれるため、朝の仕度はかなり楽だ。子どもの送迎役は父親と母親が半々ぐらい。だいたい交代で来ているようだ。
筆者自身は、長男が幼い時には早朝から預けることに多少抵抗があった。「そこまで社会に子育てを任せていいのか」「朝ご飯は、家族そろって食べるべきではないか」――。いわゆる家父長的な母性信仰、すなわち「あるべき母親像」を引きずっていたように思う。
それで、子どもにご飯を食べさせて服を着せ、引きずるように連れて行った。毎朝のバトルで親子ともどもヘトヘトに…。自分の出勤時間にも追い立てられてイライラが募り、怒りに任せて子どもを突き飛ばし、頬をつねっこともある。
コップをわざとひっくり返して食べ物をグチャグチャにまき散らす長男には、それが「早くしなさい」とわめく母親へのささやかな抵抗だとは思い至らなかった。
今は子ども3人とも早朝から連れて行き、ご飯を食べさせてもらっている。以前よりも精神的に余裕ができたので、子どもにニコニコした顔を向けていられる時間が長くなった。少なくとも、自分の思い通りにならない子どもを、力ずくで無理やり従わせるという荒業はずっと少なくなったと思う。
「ダーギス」は1クラス15人、1~5歳児混成
1クラス15人ほどのダーギスでは、1~5歳の子どもたちが一緒のクラスになる。1つの部屋にまちまちの年齢の子どもがいるわけだが、大きい子は大きい子、小さい子は小さい子で遊んでいる。「混成にして何が良いのだろう」と最初は疑問に感じたが、今ではありがたいと思うようになった。
実は、長男は言葉を明瞭に話し始めるのが非常に遅かった。筆者や夫、義理の両親、コペンハーゲンに住む叔母夫婦ら身近な人たちが、それぞれ別の言葉で話しかけるため、こういう子どもの言語習得は時間を要するのだそうだ。