聞くところによると、最近、景気楽観論に、軸足をそろりと移している論者が増えているという。ニューヨークダウが断続的に1万ドルの大台に乗せているほか、中国の経済成長率がV字型の回復を示していることなど、足元の状況になびく形で、そうした動きが出ているのだろう。

 だが、企業の経営者層から聞こえてくる話は、規模の大小を問わず、厳しいものが多い。特に、年明け後の内外景気動向について、「先が見えない不安」を前面に出す向きが多いように見受けられる。株式市場を中心とする楽観的なムードと、ビジネスの最前線にいる企業側から出てくる話との間には、明らかにギャップがある。

 21日には、鉄鋼と自動車の経営トップ層が記者会見を行った。いずれにおいても、景気が持ち直してきている基盤が本当はいかに脆弱なものなのかを指摘しつつ、現実の厳しさ、先行き不透明感の強さを強調するメッセージが出されていた。そこには、浮かれたムードは一切ない(引用は時事通信、NQN、ロイターによる)。

◆日本鉄鋼連盟会長(鉄鋼大手社長)

「(国内景気は)かなり厳しい状況が続いており、自律的な回復の過程に乗ったとは必ずしも言えない状況。各国政府の景気対策によるところが大きい」

「(10年1-3月期の粗鋼生産見通しについては、今年10-12月期と比べて)増えるとか横ばいとか、頭打ちとか、今の段階で申し上げるのは難しい」

「補正予算の執行状況や、円高が進行していることが顧客の輸出製造業に大きなインパクトを与えている(ことから不透明感がある)」

「(輸出についても)各国の政府が実施してきた景気対策の効果が一巡してくることが考えられ、微妙な状況にある」

「特に中国を中心にマーケットが弱含んでいる(輸出の平均単価が下がっている)のは、ごく最近の話だ」

「品種などによって上がったり下がったりするので、(詳細な分析が進んでいない)今の段階では(原因を)申し上げにくい」