いわゆる靖国問題が日本国内の政治論議にまた浮上した。民主党の次期代表、つまり次期首相候補に名乗りを上げた野田佳彦財務相が、首相や閣僚が終戦記念日に靖国神社に参拝し、戦死者の霊を弔うことにはなんの支障もないとする見解を表明したからだった。

 この見解は、これまでの民主党政権の靖国参拝への態度からはまったく遊離している。菅政権でも、首相はじめ閣僚たちは誰一人として8月15日に靖国神社に参拝しなかったからだ。この点は、野田氏自身に対する「では自分がなぜ参拝しないのか」という疑問にもつながる。

 野田氏は8月15日の記者会見で、「首相の靖国神社参拝は問題なし」という見解を強調した。野田氏は民主党が野党だった2005年、「靖国にはA級戦犯が合祀されているから日本の首相は参拝してはならないという論理は破綻している」と主張し、結果として時の小泉純一郎首相の参拝を擁護した。

 野田氏は当時「サンフランシスコ講和条約や4回にわたる国会決議ですべての戦犯の名誉は法的に回復された」と述べたのだった。

 今回の会見で野田氏はこの自分の主張について問われて、今もその見解を変えていないと答え、自分が首相になった場合の靖国参拝の可能性も否定はしなかった。ただし野田氏のこの言明はすぐに韓国政府からの批判的な論評を招いた。

靖国参拝問題に不干渉を通してきた米国政府

 日本の首相は自国の戦死者への弔意を表するために靖国神社に参拝してはならないのか。

 この問いに対する鳩山政権や菅政権の答えは明らかに「不参拝」だった。そして、その理由は中国や韓国からの激しい反対だったと言えよう。外国の反応が主要因なのである。しかも中韓両国の場合、日本の首相の靖国参拝に反対をぶつけるのは政府なのだ。中国政府と韓国政府なのである。

 しかし他の外国の政府はそんな反応はまったく見せていない。同じアジアでも日本軍の戦闘行動の舞台となったタイ、ミャンマー、フィリピン、インドネシア、インド、ベトナム、マレーシアなど、どの国も日本の首相に「靖国参拝をするな」とは述べていない。