東日本大震災が起きて、いろいろな分野で国家の危機管理体制の不備が露呈している。その最も大きな点が、国の安全保障を他人任せにして、自らは十分な投資をしてこなかったことだと指摘する有識者が多い。
我が国の憲法には国家の非常事態にいかに備えるのかが欠落しており、まず国家非常事態法を整備することから始めなければならないとの意見も聞こえる。
震災を受けてまだ傷も癒えないこの時期に、これまで蔑ろにしてきた安全保障体制を抜本的に立て直し、独立主権国家としての矜持を取り戻すべきではなかろうか。
防衛力整備については、この30年ほどの間、「防衛計画の大綱」に基づいて自衛のため必要最小限の防衛力を整備してきた。
独立主権国家として「本来あるべき姿」
防衛計画の大綱は、我が国防衛の基本政策を定めるものであり、国家戦略目標を明確に定め、独立主権国家として「本来あるべき姿」を追求することを求めなければならない。
しかし、現在の大綱では、憲法や政府解釈などの諸制約によって縛りがかけられ、時の政治情勢の影響を受けて政策の枠組みや財政の枠組みが決められ、いわば政治・財政的に「妥協した姿」になっている。
昨年改定した「防衛計画の大綱」も同様にこの流れの中にある。
昭和51(1976)年に最初の大綱が作られた時からの策定・改定の歴史を追ってみると明らかになることだが、最初の「51年大綱」では、それまで約20年にわたって第1次から第4次防衛力整備計画によって創り上げた防衛体制を是認し、それを「基盤的防衛力」と位置づけた。
平成7(1995)年の第1回目の改定では、「基盤的防衛力」構想を維持しながら、5兆円弱の防衛予算の枠内で、現防衛力の「合理化・効率化・コンパクト化」をうたい、陸上自衛隊の人員を削減し、艦艇・航空機も削減して、各種の事態に対応できるように防衛力の質的な変革を行った。
2回目の改定は、平成16(2004)年だが、北朝鮮によるテポドンミサイルの試射、工作船の活動、さらには9.11テロとそれに引き続くアフガン攻撃・イラク戦争など、世界の安全保障環境は大きく変わった時代だった。