米連邦公開市場委員会(FOMC)内では現在、物価見通しについてのリスクバランスで、バーナンキ議長ら連邦準備理事会(FRB)指導部、サンフランシスコ連銀イエレン総裁らハト派を含む多数派が下振れ(デフレ)方向を警戒する一方、フィラデルフィア連銀プロッサー総裁らタカ派に属する数人の地区連銀総裁が超低金利・大量の流動性供給などを背景に上振れ(インフレ)方向を警戒するという形で、意見が割れているようである。そうした中で、FOMCでは副議長を務めるニューヨーク連銀ダドリー総裁がデフレ警戒グループに属していることが、このほど明らかになった。年0~0.25%という米政策金利の超低水準がこのまま長引くだろうという市場の見方を補強する材料である。

 ダドリー総裁は10月5日に行った講演「少し良いが、最善からは非常に遠い(A bit better, but very far from best)」の中で、次のように述べて、低すぎるインフレ率への警戒感をあらわにした。

 「現在の労働市場における異例に大きい需給の緩み(スラック)に加え、われわれはコアインフレが歴史的にみて低いという事態に直面している。1981~1982年のリセッションと比べると、当時の局面の終盤よりも5%ポイントほど、コアインフレが今日低くなっていることは、注目に値する。さらに、リセッションの間に生み出されたスラックは回復の序盤でコアインフレを押し下げるのが通例だというのが、歴史的経験の示すところである。これまでのところ、そうしたサイクルはほとんど変わっていないように見える」