本州最北端の町、大間。青森県下北半島の突端にあるこの地名は、「大間のマグロ」としてその名が知られている。何百キロというマグロの一本釣りの男らしい漁の様はテレビでもしばしば取り上げられ、ドラマの舞台にもなっている。

イメージとは遠く漁業の不振にあえぐ町

マグロの町を象徴する大間崎のモニュメント

 いまではすっかりマグロの町、漁師の町というイメージが強く、一般には豊富な海産物に恵まれた土地だと思われている大間だが、全体として見れば漁業は決して順風満帆とは言えず、漁業者と漁業で支えられてきた町は、他の過疎地と同様将来への不安と開発願望を抱えてきた。

 それが形となって現れたのが、電源開発株式会社(Jパワー)が造る大間原子力発電所だ。

 静かな海沿いの土地、約130万平方メートルのなかに、日本で初めてウランとプルトニウムの混合酸化物燃料(MOX燃料)を利用するという、改良型沸騰水型軽水炉を使ったこの原発は、2008年5月に着工し、2014年11月の運転開始を目指して建設工事が進められてきた。

 「マグロに原発は似合わない」と、直感的に思う人もいるだろう。地元でも当初から反対はあった。

 しかし町や県の後押しもあって漁業者もこれを受け入れ、1基の建設が進み、町のなかには“経済効果”をあてこみ2基目も誘致したらどうだろうという声さえ出てきた。しかし、「3.11」の福島原発の事故で事態は一変、工事は中止となった。

町議会からは工事再開を求める声が

 4月の時点でJパワーでは「現在、地震の影響により建設工事の実施にさまざまな制約が生じたことなどから、保安・保全に係る工事などを除き、本体工事については休止しています」と、アナウンスしている。

 しかし、地元大間では「なんとか早く工事を再開させてほしい」という声が町議会などからいち早く出ている。

 全国的には事の重大性に鑑みれば、稼働中の原発の停止だけでなく工事中の原発についても中断ないしは撤回といった決断を国も電力会社も自治体もとるべきだという世論が高まっている。