昨日に引き続き、エコノミスト・カンファレンス「ベルウェザー・シリーズ 2011―アジア太平洋地域における金融の未来像」のリポートをお送りする。
第2回の今日は、『リスク・キャピタル:より円滑な循環の確保に向けて』と題されたセッション。日本の金融サービス業が抱える問題をテーマとして取り上げる。
パネリストは、内閣府(金融担当)の東祥三副大臣、日本政策投資銀行取締役常務執行委員の竹内洋氏、東京証券取引所グループ代表執行役社長の斉藤惇氏、マッキンゼー・アンド・カンパニー ディレクターのタブ・バワーズ氏、ミュージックセキュリティーズ代表取締役の小松真実氏。
司会はザ・エコノミスト・グループ エコノミスト・コーポレート・ネットワーク ディレクターのダン・スレーター氏。
国際競争力と地域経済を支える金融機能の向上が課題
東 昨年6月に閣議決定された「新成長戦略」では、金融戦略が7つある戦略分野の1つとして位置づけられ、金融の役割として経済を支える金融、また自らも成長する金融の2つが挙げられています。
金融庁では、これら2つの役割を十分に果たすために取り組むべき方策を、昨年12月に「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」として取りまとめたところです。
その上で例えば、総合的な取引所の創設を促す施策、外国企業等が英文により開示できる書類の範囲の拡大、あるいはプロ向け社債発行・流通市場の整備、プロ向け投資運用業の創設など、アクションプランに盛り込んだ施策に取り組んでいます。
これはあくまでも私の個人的な考えですが、一例を申し上げれば、コツコツとお金を貯めて銀行に預けている方々にとって、今は雀の涙ほどの利子しかつきません。資産を預かる金融業としてこうした利用者に何かもう少し応えることができないのか。
または、地域の成長力ある企業に対し、コンサルティングによって企業価値を高めつつ、企業の資金需要に応えていけるような、地域に密着した取り組みをより強化・拡大することはできないか。そういった問題意識を持っています。
この6月、金融審議会の下に我が国金融業の中長期的なあり方に関するワーキンググループを立ち上げましたが、金融機関の国際競争力や地域経済における金融の機能を高めるにはどうすればよいのか、といった課題について検討しているところです。
危機感の薄い日本の金融当局に「失望」
スレーター 震災のショックの後、金融庁自体あるいは金融システム担当の官僚は、危機感を持っているのでしょうか。日本の金融システムが経済成長に貢献することに加えて、金融市場がもっと大きな役割を果たすべきだと思っておられますか。