エコノミスト・カンファレンスでは、去る7月27日に東京で第2回目となるビジネス会議「ベルウェザー・シリーズ 2011―アジア太平洋地域における金融の未来像」を開催した。
今回は特に、東日本大震災が日本の金融界や財政に与える影響や3.11後の変化・動向について、政治家、金融セクター関係者、学界などの有識者による議論が交わされた。その中から4つのセッションをピックアップし、今日から4日連続でリポートをお送りする。
第1回は、『日本におけるリスク・テイキング』と題されたスペシャルインタビュー。脳科学者でソニーコンピューターサイエンス研究所上級研究員の茂木健一郎氏と、みんなの党参議院議員の松田公太氏に、リスクに対する日本人の態度、日本社会の特性を聞いた。
インタビュアーは、エコノミスト誌東京支局長のヘンリー・トリックス氏と、同誌 'Banyan' コラムニストのサイモン・ロング氏。
リスクを回避し、「安全神話」にしがみついてきた日本
トリックス 日本人はリスクテイクをどう考えているのか。これは非常にタイムリーなテーマだと思います。
東日本大震災復興構想会議のリポートに「戦後、日本は安全神話にしがみついてきた」というくだりがあります。しかし、今回の原発事故によって安全神話は完全に崩れてしまったのではないでしょうか。
「日本が安全神話にしがみついてきた」という点についてどのように思われますか。
茂木 そのとおりです。確かに日本社会全体を見ると、大学入試、企業の社員採用や雇用制度、官僚組織など、すべてがこれに関連するのではないかと思います。
これまでは安全神話に頼っていた。すべて保証されているという感じだったと思うのですが、今回それが全部打ち砕かれた。
日本人はリスクに直面しなければならなくなりました。もっと知性的に、合理的にリスクに直面しなければならないということに気づいたのではないかと思います。
松田 日本人はリスクに関してすごく弱いと思います。危険をなるべく見ないようにするというか、そこに存在しているのに存在しないかのように振る舞う国民性があるのではないかと感じます。
「赤信号みんなで渡れば怖くない」というような、みんなで同じ方向を向いていれば怖くない、リスクを見えなくしてしまう国民性です。
そもそも日本人は農耕民族ですから、根底にあるのはなるべく協調してみな同じことをやりましょうという考え方があるのだと思います。